2025年4月22日 アップリンク吉祥寺


左よりチョン・ジェウン監督、キム・ジェウク
昨年12月6日に急逝された中山美穂さんを偲び、4月22日に東京国際フォーラムにてお別れの会が開催されました。中山さんの最後の主演作となった『蝶の眠り』を製作した韓国プロデューサーのイ・ウンギョンさん、チョン・ジェウン監督、そして共演した俳優キム・ジェウクさんも出席。その後、アップリンク吉祥寺にて『蝶の眠り』が特別上映され、皆さんが舞台挨拶に駆けつけました。
満席の拍手の中を登壇されましたが、お別れの会の後でもあり、皆さん喪服で沈んだ面持ち。キム・ジェウクさんはサングラスもかけておられ、皆さんにとっても今回の出来事があまりにも急でまだショックが癒えないムードでした。司会進行役は、本作の日本プロデューサーである山上徹二郎さん。それぞれの思いを語ってくださいました。
監督「撮影、公開から8年くらい経ちますが、まさかこのような瞬間に、こういう形でまた上映されるとは想像もしませんでした。こうして皆さんと映画を観るのは楽しいことなのですが、映画はちょっと悲しいストーリー。昨年末のニュースで皆さんも驚かれたと思います。私も同じで悲しい気持ちです。それでも、こうして映画を観て中山美穂さんについて思いを馳せることができる、記念になる時間を過ごせたのは意味深いことだと思います」
お別れの会については当時たくさん報道されていましたが、中山美穂さんのアイドル時代の活躍も網羅され、知らなかったこともわかり、とても感動したとのことでした。
ジェウク「日本へ来て、映画のファンの方たち、中山さんのファンの方たち、僕のファンの方たちの前でご挨拶するのはすごく久しぶりで、楽しい気持ちでここに立ちたかったんですけど、そうじゃないのがすごく残念です。お別れの会での中山さんの映像や、僕が知らなかったお若い頃に活動されてた映像を観てたら、やっぱり僕が知ってたよりもっともっと凄い人で、美しくて、才能のある歌手であり、女優であったんだなと改めて思いながら、一緒に映画という形で作品を残せて、嬉しい気分と悲しい気分がぶつかってました。そういう思い出というか、機会を作ってくれた監督さんたちにありがとうという気持ちで観ました。…すみません、もうちょっと声を張りたいんですけど、すみません」
山下「映画で演じている蓉子は54歳の設定。去年、12月に亡くなられた時も同じ年齢でした。若年性アルツハイマーで記憶が薄れていくなか、チャネのことだけは覚えているという設定でしたが、ちょうどこの映画を再上映するにあたり、そういうことに気づくというか、思い至りました。今だからこそ、もう一度皆さんに観ていただきたい映画だと思いました。
もちろん、ミポリンという名前で若い頃から長い間アイドルをやってこられましたが、私たち映画人の中では中山美穂という一人の女優として、この映画に、最後の遺作として出演いただいたことを大変誇らしく思っています。彼女は亡くなりましたが、けっして寂しい気持ちにならずに、映画の中ではいつでも出会えるわけですから、これからもこの映画を大事に上映を続けていきたいなと思っています」
ここで山下さんから「韓国での今後の上映計画はありますか?」と本作の韓国サイドプロデューサーであるイ・ウンギョンさんに質問です。
ウンギョン「監督が最初に、この物語を一緒に撮りませんかと私に提案してから、ほぼ10年目に実現できた映画です。韓国では岩井俊二監督の『ラブレター』が大変ヒットしたので、日本の女優さんで知ってる人は誰?というと中山美穂!みたいな感じでに、毎年再上映されるくらい韓国でも有名な女優さんです。『蝶の眠り』も中山美穂さんでどうですか?と、監督と…(言葉に詰まるウンギョンさん)
去年の驚きのニュースを聞いて、韓国のいろんな劇場から再上映しませんかという話があったのですが、やはり監督も、キム・ジェウクさんも、私も時間が必要ということで、日本の様子をみながら決めましょうということになりました。
今日、お別れの会があり、再上映もありましたので、この後、日本の様子をみながら、韓国でも中山美穂さんを思う時間を作りたいと思います。そのニュースはインスタグラムやTwitterで共有できると思うので、韓国での映画の展開も楽しみにしてください」
山下「韓国でもたくさんの人に観てもらえることを祈っています。演出をされている時、なにか中山美穂さんとのエピソードはありますか?」
監督「ご存知と思いますが『蝶の眠り』は私の日本での初めての映画です。中山さんが主役に決まり、この映画が実現できました。今日のお別れの会で中山さんの映像が流れましたが、映画が3本紹介され、『蝶の眠り』もありました。『蝶の眠り』の中山美穂さんを見ながら、今も中山さんがこの世にいないというのは認めたくないのですが、ああ…いないんだなあと実感しました。今、撮影中のエピソードをお話しするのはちょっと難しいです。
ニュースを知ってから、こんなことがあるのかと、自分の気持ちの整理がまだついていないのに、韓国ではまだ『ラブレター』がすごく人気で、冬になると再上映が多く、カフェに行くとあちこちでこの音楽が流れるんです。韓国ではまだ、中山さんが『ラブレター』の中にいる、というのがあります。数日前も韓国のあるカフェで『ラブレター』の音楽が流れていたのですが、私は前みたいに中山さんを思い浮かべることができない状態です。それで、私はそのカフェで涙を流しながら、これからは冬が嫌いになるかもしれないと思いました。ただ、それではあまりに悲しいので、気持ちを変えて、これからは『ラブレター』の音楽が流れたら、中山さんの名曲などを思い浮かべながら、中山美穂さんのことを記憶し続けたいと思います。
中山さんが『蝶の眠り』という映画の中で記憶に残るかどうかわかりませんが、それでも最後の主演作だし、中山さんが演じた蓉子の意思、永遠に残したいとうメッセージがこの映画に入っていると思うので、皆さんも『蝶の眠り』を観ながら考えてください」


(c)2017 SIGLO, King Record, Zoa Films
ジェウク「彼女とお仕事をするのが凄く楽で、相手を気楽にしてくれた記憶がありますね。一緒に楽屋でお弁当を食べたりスモールトークを、作品以外のことをちょこちょこ話しながら時間を過ごした記憶があります」
まだ、思い出話やエピソードを語るには早いという雰囲気でしたが、皆さんのそれぞれの思いをお話してくださいました。そして5月23日から『蝶の眠り』のリバイバル上映が始まりました。落ち着いた大人の作家を演じる中山美穂さんのお茶目な部分も、凛とした女性としての輝きも堪能できる、素敵な作品です。映像もきれいです。ぜひ、劇場でご覧ください。
▼作品紹介
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