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ASICRO FOCUS file no.266

『すべて、至るところにある』初日舞台挨拶

2024年1月27日 シアター・イメージフォーラム(渋谷)

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主演のアデラ・ソーとリム・カーワイ監督

 1月27日、映画『すべて、至るところにある』シアター・イメージフォーラムにて公開初日を迎えました。上映後に、本作監督のリム・カーワイと、主演のアデラ・ソー(エヴァ役)が登壇しました。

 大阪を拠点に、香港、中国、バルカン半島などで映画を製作し、どこにも属さず彷徨う「シネマドリフター(映画流れ者)」を自称するリム・カーワイ監督。『すべて、至るところにある』は、リム・カーワイ監督の『どこでもない、ここしかない』(2018)、『いつか、どこかで』(2019) に続くバルカン半島3部作の完結編です。

 劇中では『どこでもない、ここしかない』『いつか、どこかで』の2作が主人公ジェイ(尚玄)の監督作品として登場。バルカン半島の美しい景色と旧ユーゴスラビアの巨大建造物(スポメニック)を背景に、現実と虚構を行き来しながら物語は進んでいきます。パンデミック、戦争という全世界が体験した未曾有の現実の中で、人間の孤独と希望を映し出したバルカン半島3部作の集大成ともいうべき作品になっています。

「インディペンデント映画の名匠と言われるようになったのに、
 巨匠ジョニー・トーに負けた!!」
まだまだ世界は遠いぞ、リム・カーワイ!!

 最近は一部で「インディペンデント映画界の名匠」とまで呼ばれるようになったリム・カーワイ監督。初回上映後に登壇し、客席を見渡してご挨拶。

 リム監督「今日は世界的巨匠ジョニー・トー監督が来日していますね。僕でもジョニー・トー監督のトークイベントを観たかったです。でもそんな中でも、ここに来ている観客の皆さんはリム・カーワイの新作を選んでくれました。本当にうれしい!ありがとうございます!」

 挨拶後、客席に静かな笑いが漂いました。『いつか、どこかで』に続いて、本作でも主役を務めた、アデラ・ソーさんは香港から緊急来日。

 アデラ「昔、日本に留学していたこともあって、いまでも日本が大好き。去年、リム監督とタリン・ブラックナイト映画祭のワールドプレミア上映に立ち会うことができて感動しましたが、今日みなさんと一緒にスクリーンで本作を観ることができてとてもうれしいです」

 本作はリム監督、尚玄さん、アデラさん、カメラマン、録音技師の5人が、車1台に乗り、セルビア、北マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナを旅しながら撮影されています。

 リム監督「旧ユーゴスラビアの巨大建造物(スポメニック)を見つけたら撮影したり、シナリオなしの即興スタイルで、過酷な撮影だったと思います。そんな撮影に参加してくれたアデラさんと尚玄さんには感謝しかありません」

 『CAME&GO カム・アンド・ゴー』『あなたの微笑み』に続き、リム組の常連で本作のもうひとりの主役ジェイ役の尚玄さんは、インドネシアで新作の撮影中のため初日舞台挨拶に登壇できませんでした。アデラさんは尚玄さんについて

トートバッグとリム監督

似顔絵トートバッグにご機嫌のリム監督
 アデラ「私は女優の役で、相手は映画監督役ということしか決まっていませんでした。映画監督役ということはリム監督が投影された役なんだと思っていました。でも尚玄さんに会ったとき『これはリム監督なんかじゃない!! 』と心の中で叫びました。あまりにハンサムで紳士で背が高くて、リム監督とはかけ離れていました。でもリム監督はいい人ですよ(笑)」

 と、隣にいる監督もフォロー。会場はあたたかい笑いに包まれていました。

 リム監督「バルカン半島でロケハンしている時に、尚玄さんから3週間だったらバルカン半島に行けるよと連絡がありました。まさか参加してもらえるとは思わなくて、これは映画監督の役を尚玄さんにやってもらおうと思いました。尚玄さんはパゾリーニ監督になんとなく似ているので、気難しい映画監督役にピッタリと思い、そこからジェイという役が固まっていきました。だから尚玄さんに僕自身を演じてもらっているなんて、そんなことはないですので安心してください(笑)」

 劇中、エヴァがジェイの映画に出演している時に「映画監督は自分勝手!」と言って、喧嘩するシーンがあります。観客からあれは実際のエピソードか?と聞かれると

 リム監督「アデラさんとは一緒に2本映画を作りましたが、一度も喧嘩はしていません。とても穏やかな撮影で、あれは実際のエピソードではありません。でも『どこでもない、ここしかない』に出演したトルコ人のフェデル(フェルディ・ルッビシ)が今回ジェイの友人役として出演しています。フェデルが『家族が反対するから、リムの映画にはもう出たくない』と言っていたのは本当です。でも結局出演してくれました。みんなの優しさに支えられていますね」

 と、リム監督はキャストへの感謝を伝えました。本作の見どころのひとつに旧ユーゴスラビアの巨大建造物(スポメニック)があります。

 リム監督「僕にとっては、人間がその空間の中でどう存在しているのかということに興味があります。その空間が人間の心に及ぼす影響を切り取っていきたい」

 と、本作の見どころを語ってくれました。最後にアデラさんからメッセージ。

 アデラ「日本の観客の方は映画を読み取る力があると感じています。この映画の細部にこめられたメッセージを受け取ってくださってありがとうございます」

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 ご挨拶の後に、リム監督からサプライズの花束が渡されました。

 リム監督「今日は集客ではジョニー・トー監督に負けてしまいましたが、明日はもうジョニー・トー監督は帰国してしまいます。でも僕はずっといます! 2月8日まで毎日トークイベントをします! 明日からもジョニー・トー監督に負けない気持ちで頑張ります!!」

 監督の熱い意気込みで締めくくると、会場は大きな拍手に包まれました。


▼ジョニー・トー監督来日舞台挨拶|▲『すべて、至るところにある』舞台挨拶 

更新日:2024.2.10
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舞台挨拶の表記

リム監督(リム・カーワイ)
アデラ(アデラ・ソー)

作品情報

すべて、至るところにある

すべて、至るところにある
Everything, Everywhere
(2023年/88分)
監督:リム・カーワイ
出演:アデラ・ソー、尚玄、イン・ジアン
*1/27よりシアター・イメージフォーラムで公開中
*詳細はアジクロシネマへ ©cinemadrifters

公開記念トークイベント
スケジュール

場所:イメージフォーラム
(上映後に開催)

1月28日 (日) 13:30回
リム・カーワイ監督
田中泰延(作家)

1月29日 (月)
13:30回
リム・カーワイ監督
アデラ・ソー(本作出演)
18:30回
リム・カーワイ監督
舩橋淳(映画監督)

1月30日 (火) 13:30回
リム・カーワイ監督

1月31日 (水) 13:30回
リム・カーワイ監督
三宅唱(映画監督)

2月1日 (木) 18:30回
リム・カーワイ監督
川和田恵真(映画監督)

2月2日 (金)1 3:30回
リム・カーワイ監督

2月3日 (土)
13:30回
リム・カーワイ監督
星野藍(写真家)
18:30回
リム・カーワイ監督
柘植伊佐夫(人物デザイナー)

2月4日 (日) 13:30回
リム・カーワイ監督
金平茂紀(ジャーナリスト)

2月5日 (月) 13:30回
リム・カーワイ監督
相田冬二(映画批評家)

2月6日 (火) 13:30回
リム・カーワイ監督
足立紳(映画監督・脚本家))

2月7日 (水) 13:30回
リム・カーワイ監督

2月8日 (木) 13:30回
リム・カーワイ監督

2月17日 (土)
尚玄(本作出演)
*2月17日の上映時間は劇場HPにてご確認ください。

*ゲスト、イベント内容は予告なく変更となる場合がございます。ご了承ください。
その他のアレコレ情報
スポメニックとは?
「モニュメント」を意味するセルビア・クロアチア語で、旧ユーゴスラビア時代に建てられた戦争記念碑のこと。
*本作にも登場するグラフィック社のガイド本はこちら。
リム・カーワイ監督がアンソニー・ウォンをインタビュー!
週刊文春CINEMAにて、リム・カーワイ監督が『白日青春』で公式来日したアンソニー・ウォン(黄秋生)をインタビューしています。
『すべて、至るところにある』
大阪初上映決定!

第19回大阪アジアン映画祭の提携企画として大阪初上映決定!
日程:3/16-4/5
会場:シネ・ヌーヴォ
*詳細は劇場サイト