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すべて、至るところにある

すべて、至るところにある(Everything, Everywhere)

監督:リム・カーワイ
脚本:リム・カーワイ
撮影:ヴラダン・イリチュコヴィッチ
編集:リム・カーワイ
録音・サウンドデザイン:ボリス・スーラン
音楽:石川潤
出演:アデラ・ソー、尚玄、イン・ジアン

2023年/日本
日本公開日:2024年1月27日
カラー/DCP/5.1ch/88分
字幕:
配給:Cinema Drifters
©cinemadrifters

poster


story

 パンデミックが世界を襲い、戦争も始まり、世界では多くの人々が死んでいった。バルカン半島で撮影を続けるジェイ(尚玄)は生きる意味を見失い、無力感に襲われていた。

 東京にいるエヴァ(アデラ・ソー)に、ジェイからのメッセージが届く。セルビアのベオグラードを訪れたエヴァは、ジェイが滞在していたアパートの家族に迎えられ、彼が彼女のために残していった物を渡される。それはハードディスクとUSB、そしてバルカン半島のスポメニック(巨大なモニュメント)に関する本だった。

 …かつてマケドニアを旅していた時、エヴァはジェイと出会った。彼に誘われて湖畔の街オフリドを訪れ、巨大な建築物を見て回る。ジェイはこれらの巨大な建築物に魅了されており、こういう建築を巡る映画を作ろうとしていた。それで念願のバルカン三部作が完成するという。

 エヴァは最初の作品『どこでもない、ここしかない』を見せてもらった。翌日、映画の撮影に参加したエヴァは、泳ぐシーンで溺れそうになるが、自分勝手な要望ばかりする彼に腹をたてる。映画は完成し、エヴァはジェイと別れて帰国するが、気持ちはすれ違ったままだった…。

 うたた寝から目覚めたエヴァは、ジェイが好きだったという屋外シアターへ案内される。完成した映画『いつか、どこかで』はまだ公開されていないという。なぜなら、最初にエヴァに見せたかったからだ。エヴァはUSBに残されていたジェイの記録映像を見る。それは、パンデミック期間のジェイの記録だった。

 エヴァはジェイの足跡をたどってマケドニア、ボスニアを訪れる。

アジコのおすすめポイント:

世界を彷徨う映画監督リム・カーワイ監督の、『どこでもない、ここしかない』(2018)『いつか、どこかで』(2019) に続くバルカン半島三部作の完結編です。2作目の主演女優アデラ・ソー扮するエヴァが、パンデミックが落ち着いた頃に監督からのメッセージを受け取り、彼を探しに行くという設定。監督役を演じているのは、世界で活躍する俳優・尚玄。2020年に撮影予定だった3作目が、世界的パンデミックにより中断し、その間に世界では戦争も勃発し…と、監督が感じた無力感や憂鬱な心象風景も投影しつつ、スポメニックと呼ばれる巨大な建造物を巡る旅が記録されています。バルカン半島といえば、かつてヨーロッパの火薬庫と呼ばれたほど紛争の絶えなかった土地。その傷跡も映され、ボスニアの人々のリアルな証言が挿入されています。前2作を観ていなくても楽しめますが、同じ登場人物や撮影場所が出て来るので、3部作を通して観るとより深く味わえます。それにしても、大画面に映し出される巨大モニュメント群は圧巻。風景も美しく、戦争で破壊された後に再建され、世界遺産になったモスタルの橋「スタリ・モスト」も登場します。バルカン半島の歴史も学びつつ、ミステリアスな旅を楽しんでください。

リム・カーワイ監督のコメント:

バルカン半島三部作の完結編となる本作は、前作同様に最小限のメンバーで制作されました。私と主演の尚玄とアデラ・ソー、そして撮影と録音のスタッフ、合計5人が車一台に乗りこみ、バルカン半島のセルビア、ボスニア、北マケドニアを撮影しながらまわりました。彼らの素晴らしいチームワークなしでは完成させることができませんでした。この場を借りて最大限の敬意と感謝を表します。そして、このパンデミックと戦争の時代を生き抜いた我々に捧げる、サイパーパンクテイストなラブサスペンスのロードムービーをぜひ多くの方にご覧頂きたいです。


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