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香港の新鋭パン・ホーチョン監督の代表作をま一挙紹介

 2004年の東京国際映画祭「アジアの風」部門、「香港新人類 −彭浩翔」と題した特集で初めて日本で紹介されたのがパン・ホーチョン監督。今回上映される短編『夏休みの宿題』から当時の最新作だった『ビヨンド・アワ・ケン』(ワールドプレミア)までの4作品がまとめて上映され、その独特な視点や映像センスは早くから注目されていました。当時、全作品の配給権を買ったところもあり、いつ公開されるのかとファンは首を長くして待っていたわけですが、なんと2011年に初ロードショー公開になったのは異色作の『ドリーム・ホーム』。監督初のヴァイオレンス作品でした。

 そんなパン・ホーチョン監督作品の中から選りすぐりの5作品が、『ドリーム・ホーム』公開と平行して一挙レイトショー上映されます。中でも、ベルリン国際映画祭で音楽賞を受賞した『イザベラ』は注目の作品。『ドリーム・ホーム』は苦手…という方は、ぜひこちらの特集をご覧ください。

●上映作品

夏休みの宿題(暑期作業/99年/12分)

夏休みの宿題 97年に発刊した小説「フルタイム・キラー」の映画化権で得た資金を、全額投資して製作した12分間の短編。夏休みの最終日になっても、まだ宿題が終わっていない少年が生み出す、恐ろしい妄想を独特のタッチで描く。台湾アカデミー賞において最優秀短編賞に輝くほか、世界の映画祭でも上映。自主映画ながら、監督の類い稀な才能が随所に見られるすべての原点ともいえる一作。

1999年 台湾金馬奨 最優秀短編賞

ビヨンド・アワ・ケン(公主復仇記/04年/98分)

ビヨンド・アワ・ケン 主演:ダニエル・ウー、ジリアン・チョン、タオ・ホン

女優志望の中国人・シャーリーの前に現れた、元教師のワイチン。シャーリーの彼氏である消防士のケンと過去に付き合っていたという彼女は、彼とベッドで撮った写真を取り戻してほしいとシャーリーに頼むが…。台湾に留学していた監督の女友達の身に起こった出来事をベースに映画化。女性脚本家との共同脚本により、女性の友情を描いたガーリー・ムービーになっているが、クライマックスへの展開はいかにもパン・ホーチョンらしい。04年の東京国際映画祭では、主演の3人も揃って来日した。

AV(AV/05年/104分)

AV 出演:ウォン・ユウナム、ローレンス・チョウ、デレク・ツァン

将来にこれといった夢も希望もないまま、卒業を控えた大学生たちが、ナンパ目的で映画製作を開始。さらに、日本からAV女優を招聘し、あわよくば彼女とHできるかも…という夢を実現させようとする。インパクトのあるタイトルや設定、本作の出演後に惜しまれながら引退したAV女優・天宮まなみの出演など、公開当時にはセンセーショナルな話題を呼んだが、じつはせつない青春群像劇に仕上がっている。香港映画評論学会が選ぶ、「今年の10本」に選出されている。

イザベラ(伊莎貝拉/06年/109分)

イザベラ 出演:チャップマン・トー、イザベラ・リョン、アンソニー・ウォン、ショーン・ユー、ジョシー・ホー、デレク・ツァン

1999年、中国返還前のポルトガル領マカオを舞台にした作品。窮地に追い込まれた汚職警官と、彼の娘だと名乗る少女の奇妙な共同生活が抒情的に描かれる。主演は製作も務めたチャップマン・トー。ヒロインに抜擢されたイザベラ・リョンは、本作の好演から数々の映画賞で主演女優賞候補となり、後に『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』でハリウッドへ進出した。

2006年 ベルリン国際映画祭 最優秀音楽賞

些細なこと(破事兒/07年/90分)

些細なこと 出演:ジリアン・チョン、チャップマン・トー、イーソン・チャン

監督が21歳のときに書いた短編小説を映画化。倦怠期を迎えた中年夫婦、見習いの殺し屋、恋する女子高生などに起こる、些細な出来事をテーマに、「不可抗力」「公徳心」「做節」「徳雅星」「大頭阿慧」「増値」「尊尼亞」といった、意味深なタイトルによる全7話が描かれる。セックスやヴァイオレンス、ブラックでシニカルな笑いを散りばめ、当初から中国大陸での上映を視野に入れない監督のアグレッシヴな姿勢は、次作の『ドリーム・ホーム』へと繋がっていく。


▼真!韓国映画祭 ▲パン・ホーチョン特集
更新日:2010.6.2
●back numbers

●期間:5/28-6/24
●会場:シアターN渋谷
*レイトショー上映(21:10-) *プログラムの詳細は公式サイトへ。
チケット情報
●当日料金:
一般1500円/シニア1000円
*『ドリーム・ホーム』特別観賞券提示で一般200円割引。(リピート可)
パン・ホーチョン監督紹介
パン・ホーチョン
彭浩翔/Pang Ho-Cheung

1973年9月22日、香港生まれ。14歳から自主映画を撮り、92年頃からATVで脚本家として活動。95年にはジャン・ラムが監督した『天空小説』の脚本を執筆。また97年に発表した小説「全職殺手」は、01年にジョニー・トー監督により『フルタイム・キラー』として映画化されている。

同年、『ユー・シュート、アイ・シュート』で長編監督デビュー。2作目の『大丈夫』で香港金像奨・新人監督賞を受賞する。その独特の世界観から「香港のタランティーノ」「次世代のウォン・カーウァイ」と称されることも。東京国際映画祭には『ビヨンド・アワ・ケン』でキャストと共に初来日。以来、毎年のように新作が上映される常連監督に。10年には『恋の紫煙』が上映された。
filmography
・ユー・シュート、アイ・
 シュート(01)
・大丈夫(03)
・ビヨンド・アワ・ケン(04)
・AV(05)
・イザベラ(06)
・出エジプト記(07)
・些細なこと(07)
・ドリーム・ホーム(10)
・恋の紫煙(10)