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ASICRO FOCUS file no.126

ジージャーが語る『チョコレート・ファイター』

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あらゆる武術をマスターしたジージャー
 ジージャーが『7人のマッハ!!!!!!!』のオーディションを受け、パンナー・リットグライ監督に見い出されたのは18歳の頃。当時、テコンドー教室を開いていた彼女は、ピンゲーオ監督に紹介され、『チョコレート・ファイター』の主演女優に抜擢されます。そして、それからの4年間は、パンナー・リットグライのもとでアクションの鍛練を積み、演技の勉強に費やしたのでした。本作が「人生の節目」だったというジージャーが、『チョコレート・ファイター』について語ります。

●4年間の訓練期間について

 ジージャー「4年はとても長い期間でしたが、おもに2つのトレーニングが中心でした。ひとつは演技の練習で、もうひとつはアクションの練習です。

 アクションは主に最初の2年間が訓練期間で、ムエタイ、体操、スタントとの殺陣、武器の使い方が中心。基本が出来たらワークショップで短い殺陣を訓練し、それを徐々に長くしていく。そして撮影。うまくいかないところがあると、またワークショップに戻って練習。また、誰かが怪我をしたら中断。そんな感じで進んでいたので、どんどん撮影が後ろに延びて時間がかかりました。

 演技のほうは、ゼン(主人公)が「自閉症」という特殊な役柄なので、自閉症の症状を理解するために、DVDやインターネットでいろんな情報を集めたり、アクティング・クラスで1ヶ月習ったり、実際に自閉症の子どもたちがいる施設に入ったりしました」

 しかし本人もまさか、準備に4年もかかるとは思っていなかったそう。撮影がいつ始まるのか心配になり、時々現場を見に行ったりもしたそうです。そして、アクションといえば、やはり怪我。スタントなし、CGなしの生身のアクションゆえ、生傷も絶えなかった模様。

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ジージャーのスーパーキックを見よ!
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 ジージャー「一番痛かったのは左目の上瞼を切ったとき。撮影を7日間中断して治療しました。でも、ヘコんだのは身体の痛みよりも、精神的な痛みでした。スタントの先生に怒られて、私じゃダメなんじゃないかと悩み、家に帰って母に相談しました。すると、母は『先生はあなたのことを怒りたいのではなく映画を良くするために言ってるのよ』と教えてくれました。それからは、そうか、映画のためか、と理解できるようになり、頑張れました」

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上/負傷した鼻を冷やすジージャー。
右/スタッフ総出で足の手当てとマッサージ。それでも笑顔なのが、逞しいですねえ。
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 アクションだけでなく、女優としての心構えが芽生えてきていますね。そして演技面では、自閉症という難しい役柄を初主演で挑戦。

 ジージャー「全く自分が知らない分野だったので、とても気が重くなりました。でもインターネットや本でデータを集めたり、『レインマン』などの映画を観て、3〜4か月、自閉症の研究をしたんです。また、自閉症の人が生活する施設に通って、彼らと3日間生活を共にしました。1日目は、彼らの泣き方、起こり方、笑い方など、あらゆる行動をじっくりと観察しました。自閉症といっても、1人1人の行動は全く違うんです。2日目は特定の1人を決めて、その人の動き全てを真似し、なりきりました。そして3日目は、彼らに私のアクションを見せてみました。すると、普通の人なら1週間はかかる技を、彼らは1回見ただけでできてしまったのです。もちろん筋肉ができていませんから、美しくはできないのですが、形は完璧でした。本当に、天才だと思いました」

●監督、そして阿部寛との共演

 そんな努力家のジージャーから見た、ピンゲーオ監督の印象はなかなか愉快です。

 ジージャー「監督はとても心の広い人で、楽しくて、まったく緊張しませんでした。いつも機嫌が良いので、それが現場を明るくしていました。 いつも気を遣ってくれていて、基本的には私に任せてくれました。違う方法を提案する時も『例えばこういうのはどうだろう?』といった感じで、やさしいんです。それに、とても面白い人で、いつも何か面白いものを現場に持ってくるんです。でも、皆がそれに反応しないと、スネてしまうんですよ(笑)。私は監督を『ドラえもん』と呼んでます。ちょっとポッチャリしているし、ポケットから面白いものを出してくれるところが似ているから。でも、監督には内緒ですよ!(笑)」

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自然な演技ができたという父娘の感動シーン
 父親役を日本の阿部寛が演じると知った時は、とても驚いてプレッシャーも感じたのだとか。初共演の感想はというと、

 ジージャー「初めての映画なのに、阿部さんは大物なので怖かったし、失礼にならないようとても気を遣いました。けれど、実際に撮影に入ると、1つのシーンでの感情や空気感をとてもうまく作り出してくださいました。泣く場面でも、阿部さんがそういう雰囲気を作り上げてくれたので、すぐ泣けたんです。すごい方だなあと思いました」

●ジージャーの素顔

 映画でのジージャーは、日本人とのハーフを演じますが、ほんとうにタイの女優さんというよりは日本人アイドル風のルックス。日本料理も大好きで、月に2回は食べているとのこと。オフの時はどうしているのでしょう?

 ジージャー「寝坊してゴロゴロしながら本を読んだり、お菓子を食べたり、ショッピングをしたり。音楽を聴いたり、映画を観たり、友達とご飯を食べたり…いたって普通でしょ?(笑)」

 男性の好みのタイプは

 ジージャー「きちんとした人。浮気をしない人。仕事が好きな人。私や家族を大切にしてくれる人。ハンサムでなくても全然かまわないんです。笑顔がかわいい人が好きです」

 この辺り、映画の中でゼンを助ける、ちょっと太めの幼なじみムンにも通じるかも。そんなジージャーの好きな俳優はというと、ジェット・リーとカレン・モク。では、将来はどんな俳優を目指すのでしょう?

 ジージャー「いろいろ試してみたいですが、オファーがあってのことなので。アクションはリスクも大きいし、もし失敗したらという不安もあります。家族を養うために、何かビジネスもしたいです」

 やはり身体は大事ですもんね。18歳にして、テコンドー教室を開いていたほどなので、ビジネス面での才能もありそうですが、まだまだ若いので、アクション女優として大きく羽ばたいてもらいたいと期待します。

 ジージャー「2年間かけて撮影をし、チーム全体で頑張った成果が結集されていますので、ぜひ観てください!」(阿部寛インタビューへ)

(c)2008 sahamongkolfilm international
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更新日:2009.5.16
●back numbers

インタビューの表記
ジージャー
(ジージャー・ヤーニン
 ・ウィサミタナン)
ジージャー
/ヤーニン・ウィサミタナン
Jija Yanin Vismitananda

1984年3月31日、バンコク生まれ。幼い頃身体が弱かったため、11歳からテコンドーを習い始め、13歳で黒帯取得。14歳でテコンドーのインストラクターに。高3の時、『七人のマッハ!!!!!!!』のオーディションを受けて見い出され、本作の主役に抜擢される。

本作へは、パンナー・リットグライのもとで4年の訓練を受け、さらに2年の準備期間を経て出演。タイ公開時、大ヒットを記録した。一見、普通の女の子が繰出す生身のスーパーアクションが注目を浴び、新しいタイプのアクション女優として期待されている。

公式ファンクラブ(タイ)
filmography

・チョコレート・ファイター
 (08)
・Do Suay Doo(09)
 *撮影中