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ASICRO FOCUS file no.52

監督と出演者が語る「グエムル」の魅力と撮影秘話

2006.7.31 セルリアンタワー東急ホテル(渋谷)

p1 左より
ペ・ドゥナ
パク・ヘイル
ポン・ジュノ監督
ソン・ガンホ
ピョン・ヒボン
コ・アソン
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 今年のカンヌ国際映画祭で招待作品として初上映され、映画祭で一番の話題をさらった『グエムル/漢江の怪物』。各国のマスコミが絶賛したという噂は届いていましたが、その後、最終仕上げを経て、いよいよ本国韓国で7月27日より一般公開に。初日から、それまでの動員記録を塗替える42万人という観客を集め、この記者会見が開かれた31日には公開5日目にして300万人を突破。そして日本公開となる今、歴代興行成績1位となっている、今年前半の韓国最大話題作『王の男』の記録(1230万人)さえ抜こうとしています。

 何がそんなに人々を魅きつけているのか? その理由は、観る人によって様々でしょう。様々な楽しみ方ができるからこそ、幅広い観客層に受け入れられているのでしょう。監督は『ほえる犬は噛まない』『殺人の追憶』の映画作家ポン・ジュノ。単純な受け狙いの娯楽作品を撮るような監督ではありません。その監督が、本作の主要キャスト全員を引き連れて来日。怪獣王国、日本で記者会見を開きました。

 監督自身からは、作品に込めた思いから、グエムルの造形や撮影中の苦労話、日本公開への期待までたっぷりと語ってくれています。また出演者からは、漢江への思いや、監督に対する辛口批評(笑)も飛び出し、愉快な記者会見となりました。ネタバレ部分はしばらく伏せ字(背景と同じ色)にしますので、映画をご覧になった後で判読してください。

 まずは、一同が揃って登壇。日本語を交えたご挨拶から記者会見がスタートしました。

 監督「たくさんの方にお集りいただき、どうもありがとうございます」と、監督はハングルでしたが、続くキャストたちは日本語(カタカナ部分)に挑戦!

キャスト1

左からポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ、コ・アソン
 ガンホ「コンニチハ、ソン・ガンホデス。マタ、オアイデキテ、ウレシイデス」
 さすが、来日経験の豊富なソン・ガンホ氏。流暢な日本語に「おお〜」の声があがります。続いては、グエムルにさらわれる娘役のコ・アソンちゃん。

 アソン「ハジメマシテ。ワタシハ、韓国カラキタ、コ・アソンデス。ヨロシク、オネガイシマス」と、かわいらしい声に拍手。そして、一家の家長役のピョン・ヒボン氏。

キャスト2

左からペ・ドゥナ、パク・ヘイル、ピョン・ヒボン
 ヒボン「皆サマ、コンニチハ。ハジメマシテ。ワタシハ、オトサンノ役ヲヤリマシタ、ピョン・ヒボンデゴザイマス。皆サマニオアイシマシテ、ホントニウレシイデス。ドウモ、アリガトウゴザイマス」
 と、用意したカンニングペーパーを堂々と読み上げ、大きな拍手を受けていました。続くパク・ヘイルもプレッシャーの中、

 ヘイル「皆サマ。(会場笑)コンニチハ。パク・ヘイル、デス。…(とタメがあって、場内爆笑&拍手。さすがに、その後はハングルで)日本では『殺人の追憶』でご挨拶をしたことがあり、来日は2回目なのですが、今回は『グエムル』のナミル役で皆さんとお会いすることになりました。どうも、ありがとうございます」

笑うペ・ドゥナ、パク・ヘイル、ピョン・ヒボン

カンペを堂々と読み上げてステージは爆笑中。

 最後は『リンダ・リンダ・リンダ』で日本映画にも出演したペ・ドゥナ。「もう日本語ぺらぺらです」と司会者に紹介され、
 ドゥナ「(笑)コンニチハ。ナムジュ役ノ、ペ・ドゥナデス。(とても自然な日本語でしたが、以下はハングルで)実は日本語はうまくできないんです。今日はほんとうにたくさんの方に来ていただいて、どうもありがとうございます」

 通常、フォトセッションは会見の後に行われるのですが、この日はゲストのユン・ソナが先に登場して花束贈呈。映画の感想などの軽いトークの後、2パターンでフォトセッションが行われました。続いて、質疑応答へ。さすがに人数が多いので、かなり長時間の会見となりました。

●『グエムル』という作品に込めたもの

Q:家族は何と闘っているのでしょう?
  その闘いを通じてどんなメッセージを伝えようとしていますか?

 監督「映画をご覧になるとわかりますが、この家族は物理的にグエムルと死闘を繰り広げます。同時に、その過程で社会の存在が浮き彫りになります。社会はこの一家を誰も助けてくれません。だから、彼らの闘いは大変孤独です。つまり、社会や世界というのもグエムルと同じで、この家族を見放している存在なのだ、ということをこの映画を通して語りたいと思いました。別の角度から言うと、あるどこかの国や社会、システムが、この映画に出て来るような弱い人たちを助けたことがあっただろうか、という疑問も投げかけたいと思いました」

 ガンホ「私が演じたカンドゥという人物は、滑稽で頭の弱い人間に見えたかもしれませんが、彼こそが最も正常だったのではないかと私は思います。巨大な組織の中には大きな秩序や制度がありますが、私たちはあまりにもそれに慣れ過ぎていて、ほんとうに純粋な気持ちや家族を思う気持ちを忘れているのではないでしょうか。なので、最も滑稽に見えた彼が、最も純粋で正常だったということを言いたいと思いました。これまで主流となっている秩序や他人が作った法則というものは、大切な家族にはかなわない。家族が最も大切です。皆さんの大切なものは何ですか?ということを考えて欲しいと思いました」(続きを読む)


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更新日:2006.9.2
●back numbers

インタビューの表記
司会・質問者
監督(ポン・ジュノ監督)
ガンホ(ソン・ガンホ)
ヒボン(ピョン・ヒボン)
ヘイル(パク・ヘイル)
ドゥナ(ペ・ドゥナ)
アソン(コ・アソン)
監督プロフィール
ポン・ジュノ/奉俊昊

1969年生まれ。延世大学社会学科卒業後、95年に短編インディペンデント映画『White Man』を監督し、シニョン青少年映画祭で奨励賞を受賞。同年、韓国映画アカデミーを第11期生として卒業。卒業作品『支離滅裂』は社会批判を描いたブラックコメディで、独特のユーモアのセンスが話題を呼び、バンクーバー映画祭、香港映画祭に招待され、一躍世界中にその名を知られる。

2000年に『ほえる犬は噛まない』で長編監督デビュー。03年には実際に起こった連続殺人事件を題材にした『殺人の追憶』で500万人を動員。大ヒットを記録する。商業的な成功と高い芸術性の両方を成し遂げた監督として、注目を集めておいる。
filmography
短編
・White Man(94)
・フレームの中の記録(94)
・支離滅裂(95)
・Sink and Rise(04)
・インフルエンザ(04)
 *『三人三色』の一話

長編
ほえる犬は噛まない(2000)
殺人の追憶(03)
グエムル/漢江の怪物(06)

ほえる犬は噛まない

ほえる犬は噛まない/DVD

殺人の追憶

殺人の追憶/DVD(2枚組)


・『グエムル/漢江の怪物』
 日本公式サイト