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鯨が消えた入り江

鯨が消えた入り江(我在這裡等你/A Balloon's Landing)

監督:エンジェル・タン
脚本:エンジェル・タン、ウー・チーモ、セブン・リョン
撮影:アイ・チョン
編集:ウェンダース・リー(H.K.S.E)
美術:シェ・ミンレン
衣装:ライ・ワンティン、 音楽:ジョージ・チェン、アニー・ロー
主題歌:「我在原地等你」(歌・HUSH)
出演:テレンス・ラウ、フェンディ・ファン、チャン・ツーシュアン、アリソン・リン、レイチェル・カン

2024年/台湾
日本公開日:2025年8月8日
カラー/scope/5.1ch/広東語・北京語/101分
字幕:三浦美穂
配給:マーチ
©2024 Drama Culture COmopany Limited.

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poster

story

 香港の人気作家ティエンユー(テレンス・ラウ)が久しぶりの新作小説を発表する。だが、盗作疑惑が浮上。世間からバッシングを浴びて傷ついたティエンユーは、7年前に文通していた台湾の少年から教わった鯨が消えた入り江、鯨逝灣(ジンシーワン)を探しに台湾へ旅立つ。そこで出会った鯨に着いて行くと天国へ行けるらしい。入っていた写真の裏には「ここで君を待っている」と書いてあった。

 幼い頃、両親と台湾で暮らしたことのあるティエンユー。台湾を訪れるのは久しぶりで、ずいぶんと変わっていた。台北の歓楽街で酔い潰れ、盗難に遭おうとするティエンユーを救ったのは、地元のチンピラ、アシャン(フェンディ・ファン)だった。ティエンユーが目覚めると、下着姿でアシャンの部屋にいた。「安心しろ。自分で脱いだんだ」と同じく下着姿のアシャン。

 「俺は台湾の陳浩南だ!」と豪語するアシャンの部屋にはレスリー・チョンの映画のポスターが貼ってあり、香港趣味に溢れていた。不安になるティエンユーだったが、他に頼る者もいない。「鯨逝灣がどこにあるか知ってる?」と尋ねると、アシャンは自信ありげに知っているという。そこで彼を信じ、バイクで連れて行ってもらうことにする。

 最初に連れていかれた入り江には小高い岸壁があり、そこは自殺の名所だった。ティエンユーは一人で崖の上に立つ。不安になったアシャンが慌てると、自殺を防ぐ会の人たちがぞろぞろと出てきた。そして、ここは鯨逝灣ではなかった。アシャンは怒るティエンユーを説き伏せ、今度は車を用意して旅を続ける。

 車がエンストすると、突然、子犬が現れて小さな滝つぼに連れて行ってくれた。そこで大声で叫んだり。アシャンの家がある墾丁へ寄って、妹分のシアシア(チャン・ズーシュアン)に会い、粽を食べたり、浜辺で遊んだり。そして、夜の花火大会。台湾の大きな自然の中を旅するうちに、ティエンユーは頑なになっていた心がほぐれてくる。だが、アシャンは問題を抱えており、悪い連中につけまわされていた…。

アジコのおすすめポイント:

台湾と香港、海を隔てた2人の若者が文通を通じて知り合い、台湾で初めて出会う物語。ただ、その文通が台湾の古い郵便箱を通じて交わされていたところがミソ。2人の文通は時空を超えており、その秘密のおかげで運命を変えていくマジカルファンタジーになっています。韓国映画の名作『イルマーレ』をも彷彿とさせますが、時空設定はこちらの方が年月も長く、より複雑です。

監督は『バオバオ フツウの家族』(18年) の脚本で注目され、TVドラマシリーズ『最初の花の香り』(21年・同年の東京国際映画祭で映画作品として上映。現在は各配信サイトで配信中)で金鐘奨脚本賞を受賞したエンジェル・タン(鄭依涵)。本作が初の長編監督デビュー作です。主演は『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』で日本でもブレイク中のテレンス・ラウと『運命のマッチアップ』(19年) で台湾電影金馬奨の新人賞を受賞したフェンディ・ファン。監督の作風やBL・GLドラマが人気の台湾ゆえ、本作もその流れで捉えられがちですが、それは特に重要ではないと監督。2人の若者の感情と交流、変化を丁寧に描いており、友情、兄弟愛…どのように捉えても成立するものになっています。むしろ、大都市・香港からやってきたクールでブルーな青年が、海や山、森と美しい自然が溢れる台湾を太陽のような明るい青年と旅するうちに、心が癒されていく過程が見どころ。謎の言葉「アタマコンクリ」は台湾に残っている日本統治時代の外来語で「阿搭馬孔固力」と書きます。石頭のことですね。これは、フェンディ・ファンの即興だったとか。また、英語の原題が「A Balloon's Landing」とあるように、本作にはレスリー・チョンの「春夏秋冬/A Balloon's Journey」のイメージが重なっています。随所にレスリーへのオマージュが散りばめられており、レスリーファンも必見。終盤、驚きのシーンでレスリーが歌う「春夏秋冬」をたっぷり聴くことができます。 すでにNetflixで配信中の本作ですが、今回はファンの要望で劇場公開が実現。2週間限定でしたが、これまた大好評につき3週間に延長された劇場も多数。テレンス人気というのもありますが、どうせならテレンスがレスリー・チョンを演じたアニタ・ムイの伝記映画『アニタ』(Disney+ 独占配信) も劇場公開して頂きたいと願うアジコです。

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