story
離婚問題を抱える中学教師のチェン(ロー・ジャンイップ)は、思春期の生徒たちに手をやいていた。喧嘩して同級生を階段から突き落としたヴィンセント(ヘニック・チョウ)。内申書に響くから反省文を書くよう促すが、拒否。両親は香港におらず「過失」でもいいと言う。委員長のウォン・ガーイー(サブリナ・ンー)が校長室へ連れていく。
学校の清掃員がゴミ箱から自殺をほのめかす手記を見つける。誰が書いたのか問題となるが、共通テスト前の生徒たちを刺激したくない。委員長に協力を頼み、密かに探すことにする。だが、そこに書かれた一文が、チェンの頭から離れない。「僕は、どうでもいい存在だ」それは、幼い日の日記に書いてあった忘れられない言葉だ。
別居中の妻ラム・シュッイー(ハンナ・チャン)は声優をしている。彼女から返して欲しいと頼まれたカバのぬいぐるみを探していると、小学生の頃のカバンが出て来た。中には日記が入っている。読まないまま心に封印していた日記。チェンは日記を読み始める…。
チェンの家は弁護士として成功した父(ロナルド・チェン)と優しい母(ローサ・マリア・ヴェラスコ)、10歳の兄ヤウギッ(ショーン・ウォン)と9歳の弟ヤウチョン(カーティス・ホー)の4人家族。おとなしいヤウチョンは優秀で勉強もでき、ピアノも上手い。ヤウギッは天真爛漫だが勉強は苦手。ピアノもまるでダメだ。
ヤウチョンが学校でピアノを披露した日、日記を書くと頭がよくなるという話を聞いたヤウギッは、日記を書くことにした。将来、香港大学に入るために。心意気はいいのだが、成績はふるわない。スパルタ教育の父親からいつも体罰を受けていた。母親が殴られることさえあった。それでもヤウギッは、大好きな漫画「パイレーツ」に励まされて頑張っている。生徒にやさしい先生になるために。
だが「なりたい大人になれる」と励ましてくれていた「パイレーツ」の作者が飛び降り自殺をした後、ヤウギッは眠れなくなり精神的に追い詰められていく…。
アジコのおすすめポイント:
2023年の東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門のアジアン・シネラマ・香港フォーカスで上映され衝撃を受けた『年少日記』がついに日本公開です。テーマは日本でも問題となっている若者の自殺。主人公の教師は小学生の頃に経験した兄弟の死と家族の崩壊で心に深い傷を負い、教師としても家庭人としても自信が持てないでいます。誰にも心を開かず、辛いことに封印をして生きているのですが、残された日記を読み返すことで自分自身と傷に向き合い、新たな一歩を踏み出していきます。製作はイー・トンシンことデレク・イー。自身の経験を投影して脚本を書き、監督デビュー作として完成させたのはニック・チェク。その見事な手腕で、数々の新人監督賞を受賞しています。
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