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asicro interview 60

更新日:2014.9.26

実際の僕はユーモラスな人間 −リー・カンション(李康生)

 ツァイ・ミンリャン監督との合同取材に続いて、アジクロではリー・カンションに単独インタビューをする機会をいただきました。早口で饒舌な監督とは対照的に、ゆったりとした口調で話すシャオカン(小康)。5月に発病した病気の影響で、来日中は監督ともども体調がすぐれず心配されていたのですが、この日は二人とも元気を回復した様子。単独インタビューでは、リー・カンションの素顔から『郊遊<ピクニック>』での苦労話、新作情報までたっぷりと語ってくれました。

p1 この10月でなんと46歳になるシャオカン(小康)。『郊遊<ピクニック>』で昨年の台湾金馬奨とアジア大平洋映画祭、さらに今年の台北映画祭でも主演男優賞を受賞し、影帝として3冠に輝く名優に成長しました。プライベートでも結婚を考える女性と安定した関係を築いている模様。公私共に充実し、幸せな様子が表情にも表れています。

●リー・カンションの素顔

 リー・カンションといえばツァイ・ミンリャン監督の作品になくてはならない常連の主演俳優。まさに映画と共に20年以上、その成長ぶりを見て来たわけですが、演じていない時の素顔のシャオカンは一体どんな人なのでしょう?

Q:ツァイ・ミンリャン監督との作品が多いので、映画作品のキャラクターとカンションさんが、ついだぶって見えてしまうのですが、実際はどういう方なのですか?

 リー「プライベートでは、どちらかというとユーモラスです。映画の中で演じているのは比較的暗い役柄が多いけど、実際の僕は違います」

Q:映画を観ていても、それはときどき感じます。今まで演じた中で、比較的、自分に近い役柄はどれですか?

 リー「まったくないですね(笑)。比較的と言うなら……どれだと思いますか?」

 と逆質問されて、iPadでフィルモグラフィを見ながら、とっさに『黒い眼のオペラ』は?と言ってしまいました。(『楽日』にすればよかった…)

 リー「この役は違うな。これは、どちらかというと暗くて孤独。でも、実際の僕は面白い人間だし、友達もたくさんいます」

 安心しました。(一同爆笑)

●子ども役で共演した甥と姪のこと

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(c)2013 Homegreen Films & JBA Production

Q:今回は親戚のお子さんと共演していますが、撮影中に楽しいことはありましたか?

 リー「娘役の姪(リー・イージェ)は僕のことをパパと呼ばなくてはならないのに、ときどき叔父さんと呼んでましたね(笑)。実は、ふたりは自分の親と家にいるよりも、叔父の僕といる時間の方が長いんです。僕は母と同居しているのですが、兄夫婦は仕事で忙しいので、ふたりは学校が終るとうちへ来ておばあちゃんと過ごすんです。それから、晩ご飯を食べた後に、親が迎えに来て自分の家に帰ります」

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(c)2013 Homegreen Films & JBA Production
 だから、仲がよいのですね?

 リー「そうです。ツァイ監督はふたりの義理の父(名付け親)になっています。兄(リー・イーチェン)の方は、ツァイ監督の『楽日』と僕の『迷子』の他、ツァイ監督の映画(短編の『是夢』)にも出演しているので、演技は初めてではありません」

Q:ふたりも将来は俳優でしょうか?

 リー「まだ、わからない(笑)…でも、撮影を嫌がってはいないですね」

●『郊遊<ピクニック>』の長回しとキャベツ

Q:『ピクニック』の最後の長回しシーンですが、なにか演出はありましたか? それとも、おふたりで考えたのでしょうか?

 リー「あのシーンは2テイク撮りましたが、監督からの指示は『この絵をずっと眺めなさい』と一言しかありませんでした。相手役のチェン・シャンチーとも何も相談しませんでした。彼女は前に立っていて、僕は少し後ろにいたので、彼女が涙を流しているのも知らなかったんです」

Q:ずっと撮っている間、時間はわかっていたのですか?

 リー「多分、長いだろうとは思いました。近くを台湾の新幹線が走っているんですが、2回くらい通ったからかなり長いはずだと(笑)」

Q:お弁当を食べるシーンも印象的で、美味しそうに食べておられましたが、あれは1テイクだったのですか?

 リー「完食するまで1回で、最初から最後まで通しで撮影しました。監督は最初から撮っていたけど、使われたのは途中からでしたね」

Q:それでも結構長いですよね?

 リー「今まではフィルム撮影だったので時間の制限があったのですが、今回はデジタル撮影だったから、20分以上になっても好きなだけ撮ってました」

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(c)2013 Homegreen Films & JBA Production
Q:そんな撮影の中で、一番辛かったことは?

 リー「僕たちは監督からのカットを待っているのですが、監督はいつもフィルムを全部使い切るまで撮るので、いつカットがかかるのかわからない(笑)。監督が感動しているのはわかったけど。それで、どんな演技をしたらいいかを考えてましたね。監督はモニターの前に座って待っているので、監督が納得するような違う演技をするので精一杯でした。それから、映画の中で川辺にしゃがんでいるシーンがありますが、そこは丸2時間かかりました。日が暮れるまでずっとしゃがんだまま、監督がOKを出すまで撮ったので、終った時は足が痺れて立てなくなってました(笑)」(次頁へ続く)


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profile
リー・カンション
李康生/Lee Kang Sheng


1968年10月21日、台北生まれ。大学受験に失敗し、アルバイトをしながら勉強しようとしていた頃、ツァイ・ミンリャン監督に見い出されてドラマ「小孩」に出演。92年にツァイ監督の『青春神話』で主役を演じ、映画デビューを飾る。以後、世界の映画祭で注目されるツァイ監督の作品で、常に主演を演じて俳優としての頭角を現す。

2000年にはツァイ監督と独立系の製作会社を設立。03年には『楽日』と同時に公開された『迷子』で監督デビューを飾っている。
filmography
*監督名の記載のないものはツァイ・ミンリャン監督作品

長編作品
・青春神話(92)
・愛情萬歳(94)
・春花夢露(96)
 *監督:林正盛
・放浪(97)
 *監督:林正盛
・河(97)
・Hole(98)
・千言萬語(99)
 *監督:アン・ホイ
・晴天娃娃(2000)
 *監督:陳義雄
・ふたつの時、ふたつの時間
 (01)
・自由門神(01)
 *監督:ワン・トン
・天橋不見了(03)
楽日(03)
西瓜(05)
黒い瞳のオペラ(06)
ヘルプ・ミー・エロス(07)
 *監督:リー・カンション
ヴィザージュ(09)
郊遊〜ピクニック〜(13)
・沙西米(15)
 *監督:パン・ツーユェン

短編作品
・行者/Walker(12)
・西遊(14)

監督作品
迷子(03)
ヘルプ・ミー・エロス(07)
台北24時(09)
関連リンク
李康生個人ブログ(Weibo)