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 今年12月はソビエト連邦崩壊から30年。この節目に、ソ連から独立した5カ国、カザフスタン、キルギス(クルグズスタン)、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンと、これらの国と深いつながりを持つアフガニスタンを加えた6つの国の新旧9作品が一挙上映されます。
 中央アジアはユーラシア大陸中央部の内陸地帯。中国の新疆ウイグル自治区とは不可分の関係にあり、タタルスタンやバシコルスタンといったロシアのムスリム地域、アフガニスタンとも非常に深いつながりを持っています。東アジアと西のイスラーム・西欧世界の交点にあり、遊牧集団による征服やイスラーム化といった歴史を経て、複雑に文化が交わる場所として長い道のりを歩んできました。
 
 上映されるのは、中央アジアの巨匠バフティヤル・フドイナザーロフのデビュー作『少年、機関車に乗る』と遺作『海を待ちながら』、カンヌ国際映画祭コンペティション出品のオファーを受けながら、本国トルクメニスタンで上映禁止となった幻の傑作『黄色い雄牛の夜』、希少な中央アジア製ミュージカルコメディ『テュベテイカをかぶった天使』、カンヌ国際映画祭女優賞受賞作の『アイカ』などなど、新旧の貴重な作品群です。
 
 開催は12月4日から12月31日まで。元町映画館(兵庫)を皮切りに、出町座(京都)、ユーロスペース(東京)、横浜シネマリン(神奈川)、名古屋シネマテーク(愛知)、そして第七藝術劇場(大阪)と6都市での開催です。この貴重な機会に「多様性のるつぼ」とも言える魅力溢れる作品群に、ぜひ触れてみてください。
  
 
 
上映ラインナップ
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テュベテイカをかぶった天使 
Angel v tyubeteyke 
(1968年/88分) 
監督:シャケン・アイマノフ 
主演:アミナ・ウルムザコワ、アリムガズィ・ラインベコフ、ビビグリ・トゥレゲノワ
  
製作:ソビエト連邦 
カラー/カザフ語・ロシア語 
*日本初公開
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STORY:地理の教師テイラクは、親切で思いやりがあり、常に伝統的な帽子テュベテイカを手放さないことから、皆に「テュベテイカの天使」と呼ばれている。ある日、母親が彼に会いに田舎からアルマティにやって来る。コスモポリタンな大都会に圧倒されつつも、彼女は息子の花嫁を探すために大胆な行動を開始するが…。 
  
解説 
カザフ映画の父と称されるS・アイマノフの代表作の1本。中央アジアの風景とソビエト建築が並ぶ大都市アルマティを舞台にした、貴重な中央アジア製ミュージカル。当時のファッションやダンス・ミュージックも見どころ。
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ジャミリャー 
Dzhamillya 
(1969年/78分) 
監督:イリーナ・ポプラフスカヤ 
主演:ナタリヤ・アリンバサロワ、スイメンクル・チョクモロフ、ナレーション:チンギス・アイトマートフ
  
製作:ソビエト連邦 
モノクロ+カラー/ロシア語・キルギス語 
*日本初公開
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STORY:出征した夫を待つジャミリャーは、夫の弟である少年セイトたちと暮らしている。彼女のことが大好きなセイトは、男達が近づくと割って入り邪魔をする。彼女は悲しみと孤独に苦悩しつつも明るく振舞っていたが、村に負傷兵ダニヤルが現れ、心が揺れはじめる。やがて二人の魂は結びついていき…。 
  
解説 
原作はキルギスの世界的文豪・アイトマートフの「この星でいちばん美しい愛の物語」。雄大な自然を背景に、迫力の乗馬シーンや野心的な演出を随所に盛り込んだメロドラマ。「キルギスの奇跡」と呼ばれる黄金時代の幕開けを予告する1本。
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少年、機関車に乗る 
Bratan 
(1991年/100分) 
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ 
主演:ティムール・トゥルスノフ、フィルス・サブザリエフ、ナビ・ベクムラドフ
  
製作:ソビエト連邦 
モノクロ/ロシア語・タジク語
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STORY:仲間と悪さをして過ごす17歳のファルーと、土を食べる癖を持つ7歳のアザマットの兄弟は、祖母と3人暮らし。兄弟はある日、遠くに住む父親に会うため機関車に乗って旅に出る。トラックとの競争や、ポットをたくさん持った変なおじさんの出現、悪ガキの襲撃などなど、機関車はハプニングに遭遇しながらもガタゴトと走っていく。 
  
解説 
中央アジアの大平原を舞台に機関車で旅する兄弟の珍道中。ユーモラスな詩情にあふれたレール・ロードムービーの最高傑作。タジキスタンが誇る巨匠、バフティヤル・フドイナザーロフ(『ルナ・パパ』)のデビュー作。
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黄色い雄牛の夜 
The Night of the Yellow Bull/The Children of the Earthquake 
(1996年/121分) 
監督:ムラド・アリエフ 
主演:マクサト・ポラトフ、アクゴゼル・ヌリィエワ、タチマメド・マメドヴェリエフ
  
製作:トルクメニスタン・ロシア 
カラー/ロシア語・トルクメン語 
*日本初公開
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STORY:少年セルダルは優しい母や兄弟と幸せに暮らしている。音楽の才あるヌリィや家族同然のアルダルなど友達にも恵まれ、学校で問題が起きれば、人格者のチャパイ校長が上手く取りなしてくれる。だが時はスターリン政権下。ある日、不穏分子として睨まれていた祖父が当局に連行され、皆の尊敬を集めるペルマノフも目をつけられる。そして、運命の時が迫る…。 
  
解説 
カンヌ国際映画祭のコンペ候補となるも、本国トルクメニスタンで上映禁止処分を受け、お蔵入りとなった幻の傑作。首都アシガバートの人口3分の2が犠牲になった1948年の地震とその時代を回想した、壮大な愛の群像劇。
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海を待ちながら 
Waiting for the sea 
(2012年/110分) 
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ 
主演:エゴール・ベロエフ、アナスタシア ・ミクリチナ、デトレフ・ブック
  
製作:ロシア・ベルギー・フランス・カザフスタン・ドイツ・タジキスタン 
カラー/ロシア語 
*日本初公開
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STORY:船長のマラットはアラル海を航海中に大嵐に遭遇し、妻や仲間を失い、一人生き残った。心に傷を負った彼はある決意を胸に、今では干上がってしまった海に戻り、荒野に佇む自分の船と対面する。そして船を引きずって水のない海を横断する無謀な旅に出る。贖罪を求め彷徨うマラットはどこに行き着くのか。 
  
解説 
2015年に急逝したフドイナザーロフの遺作。半世紀で10分の1にまで干上がってしまった、カザフスタンとウズベキスタンにまたがる大湖・アラル海を舞台に、彼の中央アジア人としての思いが投影された壮大な夢の物語。
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40日間の沈黙 
40 Days of Silence 
(2014年/88分) 
監督:サオダート・イスマイロワ 
主演:ルシャナ・サディコワ、バロハド・シャクロワ、サオダート・ラフミノワ
  
製作:ウズベキスタン、オランダ、ドイツ、フランス 
カラー/タジク語・アラビア語
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STORY:山奥の孤立した村。ビビチャは「沈黙の誓い」を立てるため祖母の家に身を寄せる。家には叔母の幼い娘が同居しており、街からは叔母が出戻ってくる。そうして葛藤を抱えた四世代の女性が一つ屋根の下に住むことに。過去に縛られ、今は恐怖や疑いに苦悩するビビチャ。彼女は沈黙の旅の末に何を見つけるのか。 
  
解説 
中央アジアで人生の節目に行われる儀式、40日間の沈黙の誓いを通して描かれる、伝統と今、幻想と現実が交錯する世界。ウズベキスタンの気鋭の映像作家が美しく瞑想的な映像で紡ぐ、女性達の内なる闘いの物語。
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彼女の権利 
Her Right 
(2020年/15分) 
監督:サオダート・イスマイロワ
  
製作:ウズベキスタン 
モノクロ+カラー 
*日本初公開
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解説 
1920年代から1980年代にかけてウズベキスタンで撮影された映画に映る女性たちをコラージュして作成された短編作品。スターリン政権下の同国で新しい労働力を生み出すために行われた女性解放運動「フジュム」を中心に構成された、イスラーム教徒の女性の歴史を見つめる15分。(『40日間の沈黙』と同時上映)
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アイカ 
Ayka 
(2018年/114分) 
監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ 
主演:サマル・エスリャモワ、ジィパルグリ・アブディラエワ、セルゲイ・マズル
  
製作:ロシア、ドイツ、ポーランド、カザフスタン、中国、フランス 
カラー/ロシア語・キルギス語
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STORY:25歳のキルギス人女性アイカは、モスクワの病院で出産するが、生まれたばかりの子供を残して病院から姿を消す。借金を抱える彼女は職を得ようとするが、ロシアでの労働許可の期限は既に切れており、まともな仕事に就くことができない。やがて、借金取りに返済を迫られた彼女は、ある決断をする。 
  
解説 
第71回カンヌ国際映画祭女優賞、第19回東京フィルメックス最優秀作品賞。手持ちカメラの臨場感ある映像で描かれる一人の女性の現実。2000年代以降にロシアで急増した中央アジア移民労働者の実態をリアルに映し出した緊迫のドラマ。
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カーブルの孤児院 
The Orphanage 
(2019年/90分) 
監督:シャフルバヌ・サダト 
主演:クドラトラ・カディリ、セディカ・ラスリ、マシフラ・フェラージ
  
製作:ウズベキスタン・オランダ・ドイツ・フランス 
カラー/ダリー語・ロシア語・ヒンディー語・ウルドゥー語 
*日本劇場初公開
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STORY:1989年、長年にわたって軍事介入していたソ連軍の撤退が迫る中、街の映画館は相変わらず賑わっている。インド映画が大好きなクドラットは学校にも行かずダフ屋をしていたところを捕まり、孤児院に入れられる。そこには不良もいるが、理解ある教師がいて、親友もでき、モスクワにも行ける。だが、国には新たな混乱が訪れようとしていた。 
  
解説 
1991年生まれのアフガン人監督が描く、思春期の少年達の群像劇。今に続くアフガニスタンの諸問題が見える。ボリウッド映画を踏襲したミュージカルシーンや、中央アジアの文化要素が入ったシーンなど、アジアの交差点の特色も映える。
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▲中央アジア今昔映画祭 
▼香港映画祭2021 ▼インディアンムービーウィーク2021 パート3
  
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更新日:2021.12.6 
●back numbers 
  
■開催スケジュール
 
12/4-10 
元町映画館(兵庫) 
12/10-16 
出町座(京都) 
12/11-17 
名古屋シネマテーク(愛知) 
12/11-24 
横浜シネマリン(神奈川) 
12/11-31 
ユーロスペース(東京) 
12/18-24 
第七藝術劇場(大阪)
 
■チケット料金
 
一般 1500円(税込) 
*その他の料金設定は各劇場サイトをご覧ください。
 
  
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