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ASICRO FOCUS file no.83

『呉清源/極みの棋譜』来日記者会見

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左よりチャン・チェン、呉清源先生と秘書の牛力力さん、ティエン・チュアンチュアン監督
2007.8.29
渋谷セルリアンタワー
(渋谷)


 17日より公開中の『呉清源/極みの棋譜』。天才棋士、呉清源の半生を、昭和という時代と共に静謐に描き、呉清源その人のような風格ある作品となっています。公開に先立つ8月末に、監督のティエン・チュアンチュアン(田壮壮)と、呉清源を演じた主演のチャン・チェン(張震)が来日。記者会見を開きました。会見後のフォトセッションでは、呉清源さんご本人も登場。貴重なツーショットも撮影することができましたので、ご紹介します。

Q:上海国際映画祭でグランプリを受賞しましたが、この映画を撮った思いは?

 監督「呉先生の生涯を描いた作品や本を読んで、ほんとうに尊敬の念が湧いて来ました。呉先生はしっかりとした信仰を持ち、精神世界を探究していく素晴らしい方です。大変尊敬しているので、撮ることにしました。現在社会の中では、自分の精神をきちんと持っている人が少ない。だからこそ、この映画を撮りたいと強く思いました」

Q:チャン・チェンさんに一目会っただけで起用を決めたそうですが、その理由と、俳優としての魅力を教えてください。

 監督「中国でも日本でも『縁』という言葉を大切にしていますが、監督と俳優の関係も『縁』で決まると思っています。探しても探しても、いい俳優が見つからない場合もありますし、今回のように一目見て『彼だ』とピンと来たこともあります。魅力については、今日は本人の前なので、多くは言いませんが、とにかく彼はとてもいい俳優です」

 司会「監督から一緒にやってみないかと言われた時、いかがでしたか?」

 チャン「初めてお会いした時は、以前にも会ったことがあるような気がして、とても親しみを覚えました。それで、監督に起用されたのですから、やはり縁なんでしょうね」

Q:役作りのために、実際に呉清源さんと一緒に過されたそうですが、どんなことをされたのですか?

チャン・チェン

すっかり大人になったチャン・チェン
 チャン「一緒に暮らしたのではなく、呉先生とお会いして、お話をさせていただきました。僕はどちらかというと聞き役で、当時、どんな暮らしをしていて、紅卍会に入信してどういう人に会ったとか、どのうような影響を受けた、などを聞きました」

Q:呉清源さんとお会いして、どんな印象でしたか?

 チャン「初めてお会いした時は、とにかく穏やかな方だなという印象でした。そして、一緒にお話をしていると、ほんとうに特別な方だと思いました。記憶力がかなり素晴らしいんです。いつどこで、どういう人と会ったというのを、かなり昔のことでもはっきりと語ってくださいます。呉先生が70年前に囲碁をさした時の記録フィルムも一緒に観ましたが、その後で、なんと呉先生は、その70年前の対局をそのまま、1つ1つ碁石を並べてくれたんです。こういう面でも不思議な方、特別な方だという印象を強く受けました。とにかく、1人の人間が1つのことにこれだけ専念し、情熱を持って通すという精神力が素晴らしいと思いました」

Q:日本でロケをされていますが、それぞれお気に入りのロケ地を教えてください。また、苦労した所なども教えてください。

 監督「日本でのロケは大変でした。東京では古い屋敷が見つからなかったので、近江八幡の近くで撮影しました。古い歴史を表現するには、古い屋敷や家屋が必要だったのです。近江は東京とは違いますが、その中で私たちなりに工夫しました。好きなロケ地は、日本海ですね。波が素晴らしいです」

 チャン「ほとんどを近江八幡で撮影しましたが、僕がわりと好きなのは、囲碁の撮影をしたお寺です。秋なので景色がとても美しかったし、普段はお寺をじっくり見る機会がないので、とても気に入りました。僕自身は、苦労したことはあまりなかったです。名監督との仕事ですから、むしろ楽しみでした。過程をエンジョイできますし、監督自身がとても魅力的な方なので、一緒に仕事をしているクルーの皆さんも、家族のようにまとまっていました。

 現場では、撮影時間は長かったですが、仕事はとても順調でした。全員で近江八幡に滞在して、生活環境もよくて、現場も和やかで、仕事もうまくいきました。自分自身の演技にも満足することができました。こういう感覚は、なかなか体験することができません。そういう意味では、このような素晴らしい仕事をエンジョイできる過程やチャンスを与えてくださった監督に、この場を借りてお礼を言いたいです。ありがとうございました」(続きを読む)


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更新日:2007.11.27
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記者会見の表記
司会
監督
(ティエン・チュアンチュアン)
チャン(チャン・チェン)
監督プロフィール
ティエン・チュアンチュアン
田壮壮/Tian Zhuang Zhuang

1952年、北京生まれ。両親とも著名な映画俳優で、幼い頃から撮影所に出入り。文化大革命時は紅衛兵となり、後に吉林省に赴任する。人民解放軍入隊後、何本かのドキュメンタリー作品の撮影助手を務める。78年に北京電影学院の監督コースに入学。チャン・イーモウやチェン・カイコーらと共に映画を学ぶ。

93年に『青い凧』で東京国際映画祭グランプリを受賞するが、中国での検閲を通っていなかったため、国内での10年間の監督活動停止処分を受けた。02年に『春の惑い』でベネチア国際映画祭サン・マルコ賞を受賞。03年には若手監督のHD撮影を支援する「BDI Films Inc」を設立。『五月の恋』(04)や『ジャスミンの花開く』(04)の製作も行っている。
filmography
・紅象(81)
・九月(83)
・狩場の掟(84)
・盗馬賊(85)
・鼓書藝人(86)
・ロック青年(87)
・特別手術室(88)
・清朝最後の宦官
 /李蓮英(90)
・青い凧(91)
・春の惑い(01)
・天空への道/茶馬古道の人々(04)
・呉清源/極みの棋譜(06)