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ASICRO FOCUS file no.61

映画祭を彩ったゲストスターたち

チャーリー・ヤン&パトリック・タム監督

最優秀アジア賞と最優秀芸術貢献賞をダブル受賞した香港の
パトリック・タム監督(右)と主演女優のチャーリー・ヤン


アジアの風

 「アジアの風」部門では、話題の新作やなかなか一般上映では観られない作品が、アジア各地から揃いました。まずは、17年ぶりの監督復帰作で見事、最優秀アジア賞と最優秀芸術貢献賞をダブル受賞した『父子』の、パトリック・タム監督とゲストたちによるティーチ・インをご紹介します。

 かつて、香港ニューウェーブの父と呼ばれ、ウォン・カーウァイ監督らに影響を与えたパトリック・タム監督。17年ぶりに作品を完成させた感想と、この題材を選んだ理由は?

 監督「17年は長いですが、自分の力を完全に注ぎ込めるという確信が持てるまでは、作品に手をつけることができませんでした。率直に言って、過去の作品には完全に満足していなかったので、この17年間はさらに磨きをかけようとしました。ですから、この作品には大変思い入れがありますし、必然性もありました。この物語は、10年ほど前にマレーシアで教えた時の生徒が作った脚本を元にしています。やっと生徒たちと、コラボレーションができました。一番難しかったのは、登場人物たちが経験する苦境を描くことです。家族が離婚してバラバラになりますが、これは私にとっても重要なテーマでした。なので、最初に監督をする時は、このテーマにしようと思っていました。脚本は後20本ほどあり、製作待ちです(笑)。まだプロジェクトは始まったばかりです」

ヴァレン・シュー&監督

最初の上映ではヴァレン・シュー(左)が登場。

 なんと20本もあるとは! 17年間で暖めた構想なのでしょう。これからが楽しみです。主人公の妻を演じたチャーリー・ヤンと、その隣人で親友を演じた映画初出演のヴァレン・シュー。出演の感想は?

 チャーリー「とても素晴らしい経験でした。なによりも、監督の素晴らしい情熱に引き付けられました。これはとてもよい物語です。身の回りにある現実の様々な要素が反映されているので、自分自身を再確認することができます。例えば、結婚は重要ですが、結婚後もよく考えて、いい結婚生活にしないと、次の世代に影響してしまいます」

 ヴァレン「全体に緊張感が走っていますが、私の役柄はそれを和らげるものでした。観客の皆さんにも私が感じていたことが伝わっていればと思います」

 台湾の歌手でもあるヴァレン・シュー。歌と演技ではどちらが好き?という質問には「両方」と答えていました。では、夫役のアーロン・クォックと大胆なベッドシーンを演じた、妻役チャーリーの感想は?

チャーリー・ヤン、ヴァレン・シュー、監督

2回目の上映にはチャーリー・ヤン(中央)も応援に。

 チャーリー「実際のところは、ヒヒヒ…ということで(笑)、大切なのは演じている時に、自分の感情に納得し理解していること。監督から指示をいただいて挑みましたが、感情はうまく反映できたと思います。あの時は、夫から逃げたい気持ちとまだ愛しているのかという気持ちの葛藤があり、複雑な心境でした」
 監督「補足しますと、あのシーンでは彼女の手に焦点をあてました。手にすべての感情が表れています」

 『父子』は、両親が離婚した後、だらしのない父親と生活を続ける少年ボーイが、父のせいで次第に悪に染まり、ついには父と訣別する様を痛々しく描いた物語。終盤、成長したボーイが過去の罪を償い、父の消息を尋ねて湖を訪れます。彼方には父かもしれない人影が。この美しくも印象的なシーンについて。

 監督「そこは最も重要なシーンです。大人になっても、ボーイには父親への愛情や気持ちが残っていることが伝わってきます。だから、父親が新しい人生を歩んでいると聞いて、また彼を尋ねたいと思うのです。しかし、本当に対面していいのかどうか決断がつきません。その男が父親かどうかもはっきりしません。そこに、彼の決断に対する逃げ道が用意されています。ボーイが逃れられないのは父親との過去の思い出。ボーイはまだ、過去と未来の間にとらわれており、このシーンには彼の複雑な感情が反映されています。これから彼がどんな決断を下すか、簡単にはわかりませんが、それが人生というものでしょう」

 う〜ん。深いですね。そのボーイ役を見事に演じて、先日の台湾金馬奨でなんと!史上最年少の助演男優賞を受賞したのがン・キントー(呉景滔)君。彼はどうやって発見されたのでしょう?

 監督「今回は大変ラッキーでした。彼のお母さんは有名な女優で、これまで私の2つの作品に出演してもらっています。プロデューサーの友人でもあったので、彼女の方から紹介してくれました。ボーイ役を見つけたことは、この作品にとってほんとうに幸運でした」

 この『父子』は、台湾金馬奨で最優秀作品賞と主演男優賞(アーロン・クォック)にも輝いています。興味を示している配給会社もあるとのことなので、ぜひ、一般公開されることを祈りましょう。


一年の初め

左からチェン・ヨウチェ監督、出演した
クァ・ジャーイェンモー・ツィイー

左:台湾金馬奨で編集賞と映画音楽賞(林強)を受賞した『一年の初め』のゲストたち。

右:2007年公開予定のサスペンス・スリラー『詭絲/Silk』。こちらも金馬奨で視覚効果賞を受賞しました。チャン・チェン他、豪華出演陣の話題作です。

詭絲/Silk
 スー・チャオピン監督の他、日本から
 参加した江口洋介(左)が応援に。

 昨年日本でも公開された『僕の恋、彼の秘密』で一躍注目された、台湾の新進女性監督DJ チェンの最新作は、できたてほやほやの状態で世界初上映された『不完全恋人』。北京を舞台にした作品で、阿部力が主演しています。相手役の女優シー・クーも中国の新人。もともとは、台湾のベテラン歌手ジェフ・チャンの新譜のために作られた映像が映画へと発展した物語で、本人も味な映画監督役で出演しています。「阿部君の泣き顔が素敵だった」と語るチェン監督。この後で手直しもされたようなので、ラストでちょっとかわいそうだった不完全な恋人同士が、少しでもハッピーになっていることを祈ります(笑)。

不完全恋人1

初日の舞台挨拶はカジュアルな感じで。
不完全恋人2

シアターコクーンではドレスアップ。
(写真左:左より阿部力、シー・クー、DJ チェン監督、ジェフ・チャン


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更新日:2006.12.8
●back numbers
アジア関連ゲスト一覧
●アジアの風1

I'll Call You
・ラム・ジーチョン(監督)

Crazy Stone
・グオ・タオ
・ファンキー末吉(音楽)

My Mother is a Belly Dancer
・リー・コンロッ(監督)

青春期
・タン・ダーニエン(監督)
・ティエン・ユアン

イザベラ
・パン・ホーチョン(監督)

四大天王
・ダニエル・ウー
(監督/主演)
・アンドリュー・リン
・チャン・チー・ユン
(撮影・編集)
・チャン・ワイ・ヒュン
(撮影・編集)

八月的故事
・ヤンヤン・マク(監督)
・ティエン・ユアン
・藤岡竜雄 

父子
・パトリック・タム(監督)
・チャーリー・ヤン
・ヴァレン・シュー

アリスの鏡
・ヤオ・ホンイ(監督)

一年の初め
・チェン・ヨウチェ(監督)
・モー・ツィイー

永遠の夏
・レスト・チェン(監督)

シルク
・スー・チャオピン(監督)
・江口洋介

不完全恋人
・DJ チェン(監督)
・阿部力
・シー・クー
・ジェフ・チャン

家族の誕生
・キム・テヨン(監督)

夏が過ぎゆく前に
・ソン・ジヘ(監督)

父子

父子/香港版DVD

*1/30発売予定

My Mother is a Belly Dance

My Mother is a Belly Dancer

香港版DVD
*1/30発売予定