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1980 僕たちの光州事件

1980 僕たちの光州事件(1980/1980 The Unforgettable Days)

監督:カン・スンヨン
脚本:カン・スンヨン
撮影:キム・ギテ、ユ・ビョンジェ
編集:オ・ミョンジョン
美術:カン・スンヨン
音楽:ク・ヒョジン
出演:カン・シニル、キム・ギュリ、ペク・ソンヒョン、ハン・スヨン、ソン・ミンジェ、パク・チュウォン、チョン・スジン、ミンソ、ユ・オソン、パク・チュニョク、イ・ジョンウ

2024年/韓国
日本公開日:2025年4月4日
カラー/シネマスコープ/5.1ch/99分
字幕:本田恵子
字幕監修:秋月望
配給:クロックワークス
©2024 JNC Media Group

poster

story

 1976年10月26日、独裁政権のパク・チョンヒ大統領が暗殺され、民主化を求める学生デモが盛んになる。このソウルの春は、1979年12月に粛軍クーデターを起こしたチョン・ドゥファンが1980年9月に大統領に就任するまで続いた。

 1980年5月17日、光州。中国料理レストランの和平飯店が開店する。名物は店長(カン・シニル)が作るチャジャン麺だ。店は長男サンウォン(ユ・オソン/イ・ジョンウ)の妻(キム・ギュリ)が臨月の身体で切り盛り。近所でヨンヒ美容院を営むヨンヒの母(ハン・スヨン)とヨンヒ(パク・チュウォン)も、開店祝いにかけつけていた。サンウォンの息子チョルス(ソン・ミンジェ)はヨンヒが大好きで、将来結婚しようと思っている。

 サンウォンはソウル大でデモに参加しており、店長は孫のチョルスに店を継いで欲しがっているが、チョルスは中国料理は嫌だと言う。サンウォンの弟サンドゥ(ペク・ソンヒョン)が、婚約者のアモーレ(チョン・スジン)と一緒にやって来た。結婚式はもうすぐだ。開店を祝って、皆で家族写真。店の前でお祝いを盛り上げるピエロに扮しているのは、実はサンウォンだった。

 だが、街では市民によるデモが活発化し、戒厳令が発令される。軍隊が配備され、店に食事に来た軍人たちが学生にからんで乱闘騒ぎ。不穏な空気が漂っていた。軍人たちに追われるサンウォンが、血だらけになって逃げ込んで来るが、再び出て行く。その夜、泥酔して警察に捕まったサンドゥを町内会長(イ・ダリョン)が連れて来る。彼は自分が父親に嫌われるのは、母が自分を産んで死んだからだと思っていた。

 5月19日。店長はサンドゥに料理を教えることにする。サンドゥは喜んで、タコ入りジャジャン麺を作る。休校令が出て、チョルスとヨンヒが学校から帰って来た。さらに、軍人たちが店に乱入。学生たちを捕まえようとする。サンドゥが怒って口を出すと、サンドゥまで「アカ」呼ばわりされ連行されてしまう。チョルスは軍人であるヨンスの父(パク・チュニョク)に、サンドゥおじさんの様子を調べてもらうとするのだが…。

アジコのおすすめポイント:

ジャジャン麺が名物の中華レストランを開店したばかりの家族。幸せな一家と周囲の人々の生活に、突如、軍隊が乱入してきます。彼らの運命はどうなるのか…。実話を元に作られた作品です。いくつかのエピソードが、家族の物語として集約されているのでしょう。『KCIA 南山の部長たち』『ソウルの春』に続く時代に起こった光州事件。独裁政府が一般市民に銃を向けた重要な事件として、韓国の人々の心に刻まれています。『タクシー運転手〜約束は海を超えて〜』では、外から見た事件が描かれますが、光州にいた人々の視点から描かれたのは、2007年の『光州5・18』と本作でしょう。韓国では昨年3月に公開され、5月にも光州事件から45周年を記念して再上映されています。そして日本公開となる今は、大統領の罷免で次期大統領選に揺れており、韓国市民にとって戒厳令がどれほど辛い歴史なのか、政治に対する運動に熱くなるのはなぜか、を理解する上でも見るべき作品となっています。監督はカン・スンヨン。美術監督として数々の名作(『大統領の理髪師』『王の男』『安市城 グレートバトル』)を手がけたベテランの長編デビュー作です。幼い少年・少女の視点から描かれる本作。「なぜ?」という疑問符は、今世界で起こっている多くのことにも向けられる言葉です。

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キム・ギュリとペク・ソンヒョン、監督が語る映画の裏側と想いが届いたので、ご紹介します:

『これは私たちの物語であり、私たちの歴史です』

本作は、全羅南道の路地裏に中華料理店を開いたチョルスの家族や隣人たちの物語で1980年の光州の痛みを表現し、韓国では記憶に残る映画と高い評価を得ている。どんな状況に陥っても笑顔を絶やさなかったチョルスの母親役のキム・ギュリはこの映画に出演することになった経緯について「実は台本をいただいた当時は、ラジオのDJをしていて、木浦に行って撮影するというのは負担だったのでしばらくの間放置していたのですが、台本を読んでみたら凄く面白いじゃないですか。それで出演を決めました」と語る。「最近映画の公開というものは簡単ではありません。でも『ソウルの春』が社会的なイシューとなり、好評を博したことが本作の公開を後押ししました。本作は『ソウルの春』の後を描いたものです。12.12を防げなかったから、5.18の民主化運動が起こってしまった。ですので、この作品も多くの人に興味を持っていただけました」と『ソウルの春』との関係性について述べ、「この映画が誰かに力を与えられる映画であったら嬉しい。チョルスの母親の為に誰かがたくさん涙を流してくれたら力になるし、慰めになるのではないかと思います」とメッセージを残した。

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酒飲みだが父親の中華料理屋で日々仕事に励むチョルスの叔父を演じたペク・ソンヒョンは、カン・スンヨン監督と『雲から抜けた月のように』を通して関係性を築き、ドラマ「ボイス4~112の奇跡~」の撮影中に「あなたを見て、『1980 僕たちの光州事件』の叔父さん役を書いたよ」と言われ、その言葉にとても感動し出演を決めたという。カン・スンヨン監督が美術監督としての30年のキャリアをすべて注ぎ込んだというセットについては、「木浦のセットを見に行ったんですが、やっぱり監督はその分野では大御所ですので、他とは全く違いました。実際に1980年に全羅南道の路地裏にあった中華料理店に訪れた感じでした」と絶賛。さらに「素晴らしいディテールであふれていたので、演技に没入できてよかったです」と敬意を表した。

メガホンをとったカン・スンヨン監督は本作が監督デビュー作。「美術監督をしながらたまに脚本を書いていて、偶然5.18について勉強することになりこの作品を書き上げました。この映画は小さな市民の物語です。私は戦士や英雄たちを見せたかったのではなく、民主的な蜂起に参加するしかなかった普通の人々を見せたかったのです」とコメントした。

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