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ビニールハウス

監督:イ・ソルヒ
脚本:イ・ソルヒ
撮影:ヒョン・バウ
照明:イ・ユソク
編集:イ・ソルヒ
美術:イ・ヒジョン
衣装:パク・セヒ
音楽:キム・ヒョンド
出演:キム・ソヒョン、ヤン・ジェソン、シン・ヨンスク、ウォン・ミウォン、アン・ソヨ、キム・ゴン、ファン・ジョンミン

2022年/韓国
日本公開日:2024年3月15日
カラー/2.39:1/5.1ch/100分
字幕:大塚毅彦
配給:ミモザフィルムズ
©2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED
2023年 釜山国際映画祭
 WATCHA賞/オーロラメディア賞/CGV賞
2023年 大鐘賞 主演女優賞(キム・ソヒョン)
2023年 釜日映画賞 主演女優賞(キム・ソヒョン)
2023年 韓国映画評論家協会賞 主演女優賞(キム・ソヒョン)
2023年 黄金撮影賞 主演女優賞(キム・ソヒョン)
2023年 美しい芸術家賞 独立映画芸術家賞
2023年 大韓民国文化芸能大賞 最優秀賞


poster

ビニールハウス(ビニールハウス/Greenhouse)

story

 ソウル郊外の農村地帯にぽつんとたたずむ黒いビニールハウス。夫との離婚後、そこを住みかにしている孤独な中年女性イ・ムンジョン(キム・ソヒョン)の夢は、少年院に収容されている十代のひとり息子ジョンウ(キム・ゴン)と一緒に暮らすことだ。

 見晴らしのいいアパートに引っ越す資金を蓄えるため、訪問介護士兼家政婦として働くムンジョンは、老夫婦テガン(ヤン・ジェソン)とファオク(シン・ヨンスク)の家に通っている。元大学教授のテガンは視力を失っているが紳士的で、仕事熱心なムンジョンに厚い信頼を寄せている。しかし重い認知症を患うファオクには被害妄想の気があり、しばしばムンジョンを困らせていた。

 自傷行為を繰り返すムンジョンは、病院からの紹介で、悩みを打ち明け合うグループセラピーに参加。スンナム(アン・ソヨ)という若い女性と知り合う。不安定で依頼心の強いスンナムはムンジョンになつき、つきまとうようになる。セラピスト(ファン・ジョンミン)から忠告も受けたが、彼女が虐待されているようだと気づく。

 そんなある日、ファオクが風呂場で突然暴れ出し、取り返しのつかない悲劇が起こる。揉み合いのさなか、ファオクが転倒して絶命してしまったのだ。頭が真っ白になったムンジョンは、一度は救急車を呼ぼうとするが、我が子との未来を守るため大量の血を洗い流し、飲み会から帰宅したテガンに「奥様は眠っています」と嘘をつく。そしてファオクの遺体をビニールハウス内の箪笥の中に隠した。

 さらに、病院にいた母(ウォン・ミウォン)をファオクの代役に仕立てたムンジョンは、罪の意識に苛まれながらも、テガンのもとに通って働き続けた。年老いて衰弱した母はまったく言葉を発しないので、テガンはすり替えに気づかない。しかし、医師から初期の認知症と宣告されたテガンは、妻との無理心中計画を考え始めていた…。

アジコのおすすめポイント:

「半地下はまだマシ」というキャッチフレーズと疲れ果てたようなヒロインの顔のアップによるポスターが強烈な本作を、劇場で観て来ました! 休日でファンサービスデーでしたが、話題作でもありほぼ満席。ただならぬ雰囲気のキム・ソヒョン(『アトリエの春、昼下がりの裸婦』)は、やはり美しく健気な女性を演じておりました。ポスターに騙されてはいけません。けっして、アブナイ女性ではなく、運命に翻弄されて一歩誤ってしまったがために起こる負の連鎖を、まだ知らないうちに映画は終わります。その後の展開にはいろんな解釈の余地があり、救いの空間を見出す人もいるかもしれません。そのくらい、すべての事象が唐突に、あるいは乱暴に提示されたところでスパッと放り出されます。俳優としては新境地となったキム・ソヒョンは数々の主演女優賞を獲得。さすがです。自身の母親と母(祖母)の介護関係をきっかけに、高齢者や介護にまつわる綿密なリサーチをして実際に起こっている事件から着想を得たという監督の描く世界はまさにリアル。韓国映画アカデミーで学んだ1994年生まれのイ・ソルヒ監督による長編デビュー作。イ・チャンドン監督のようなテイストをも感じさせる大型新人監督の登場です。


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