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サタデー・フィクション

サタデー・フィクション(蘭心大戯院/Saturday Fiction)

監督:ロウ・イエ
原作:ホン・イエ「上海之死」、横光利一「上海」
脚本:マー・インリー
撮影:ツォン・ジエン
音響:フー・カン
編集:ロウ・イエ、フォンシャンユーリン(封山育林)
アクション監督:ヤン・ダーイー
美術:ジョン・チョン
衣装:マイ・リンリン
VFX:ワン・レイ
出演:コン・リー、マーク・チャオ、中島歩、パスカル・グレゴリー、トム・ヴラシア、ホァン・シャンリー、エリック・ワン、チャン・ソンウェイ、オダギリジョー

2019年/中国
日本公開日:2023年11月3日
モノクロ/1:1.85/5.1ch/126分
字幕:樋口裕子
配給:アップリンク
©YINGFILMS 2019
2019年 ベネチア映画祭コンペティション部門正式出品作品
2019年 ギジョン国際映画祭
 監督賞(ロウ・イエ)/美術賞(ジョン・チョン)
2019年 BRICS映画祭 監督賞(ロウ・イエ)
2021年 鳳凰網映画&TVアワード 監督賞(ロウ・イエ)
2021年 中国ムービーヒーローアワード 編集賞(ロウ・イエ)
2023年 中国映画協会作家連盟賞 脚本賞(マー・インリー)


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story

 1937年11月、上海は陥落するが、日本軍の侵入を免れた英仏租界は「孤島」と呼ばれていた。蘭心大劇場では、演出家のタン・ナー(マーク・チャオ)率いる新月劇団が「サタデー・フィクション」のリハーサルを行っている。

 1941年12月1日。雨の上海に人気女優ユー・ジン(コン・リー)が香港からやって来た。キャセイホテルにチェックインすると、支配人のシュパイヤー(トム・ヴラシア)が彼女を歓待する。部屋には養父ヒューバート(パスカル・グレゴリー)からの花と手紙が置いてあった。手紙には日本人夫婦の写真が入っていた。ユー・ジンは蘭心大劇場に電話し、自分が来たことをタン・ナーに伝えてもらう。彼女の電話はすべて、シュパイヤーに盗聴されたいた。

 蘭心大劇場では、「久しぶりの舞台に立つためにユーがやって来た」とタンが喜ぶが、プロデューサーのモー・ジーイン(エリック・ワン)は、彼女の元夫ニイ・ザーレン(チャン・ソンウェイ)が日本軍に捕まったから助けに来たのだと言い、彼女に深入りしないよう忠告する。タンはかつてユーと付き合っており、当時のスキャンダルをモーがもみ消した過去があった。

 12月2日。ホテルを出たユーに熱烈なファンという若い女が「稽古を見たい」としつこく声をかけてくる。日本で勉強していたので、ニイの監禁場所にツテがあるという。ユーは彼女を稽古場まで連れていく。彼女バイ・ユンシャン(ホァン・シャンリー)は国民党政府がある重慶のスパイで、それに気づいたモーが声をかけてきた。モーは日本の傀儡政権がある南京のスパイなのだ。二人ともユー・ジンの真の目的を探っていた。モーが手を組まないかとバイに体を寄せるが、ビンタを喰らう。

 12月3日。日本海軍少佐の古谷三郎(オダギリジョー)が護衛の梶原(中島歩)と共にキャセイホテルにチェックインする。軍令部通信課に所属する古谷は、新しい無線信号と海軍の暗号書を教えに来たのだった。彼の妻、美代子は行方不明になっていた。

 その頃、医者から睡眠薬を受け取ったシュパイヤーが、ホテルの隠し部屋でヒューバートと会っていた。ヒューバートは連合軍に属するフランス側のスパイだ。古谷の妻、美代子を手違いで殺してしまったため、彼女に似ているユー・ジンを使って古谷から情報を聞き出そうとしていた。「マジックミラー作戦の開始を求む」彼は本国に打電する…。

アジコのおすすめポイント:

ロウ・イエ監督が『パープル・バタフライ』以来、上海を舞台に描く王道スパイアクションです。原作は作家ホン・インの「上海之死」。一人の女スパイの上海での活動と顛末を描いた小説を、脚本のマー・インリーとロウ・イエが大きく改変し、太平洋戦争開戦前の情報戦で連合軍の諜報活動に協力した女優の姿が描かれます。さらに、劇中劇として登場する演劇の原作が横光利一の「上海」。酒場で偶然再会した男女の会話と、やがて恋仲になる二人。繰り返される酒場でのシーンと、かつて女優と恋仲になった舞台監督の状況がシンクロし、トリッキーに進行していきます。舞台のセリフ部分は「”」で囲ってあるので、字幕にご注意。果たして、女スパイが日本人少佐を相手に行った「マジックミラー作戦」とは?! 主演はコン・リー。美しさと力強さを兼ね備え、ガンアクションも披露する女スパイ役を貫禄で演じています。彼女に翻弄される舞台監督は台湾のマーク・チャオ、そして日本人少佐役をオダギリジョーといずれもハマり役で見事なキャスティング。危ない男と言われる護衛役の中島歩も強い印象を残します。スリリングな展開が美しいモノクロ映像で綴られていく中、劇で使われるジャズの生演奏だけが緊張をほぐしてくれる唯一の音楽に。撮影は現存する蘭心大劇院とキャセイ・ホテルが使用されており、蘭心大劇院の楽屋は舞台俳優を両親に持つロウ・イエ監督の幼い頃の遊び場だったとか。本作はそのご両親に捧げられています。


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