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君は行く先を知らない

君は行く先を知らない(Hit The Road)

監督:パナー・パナヒ
脚本:パナー・パナヒ
撮影:アミン・ジャファリ
音響:アブドゥルレザ・ヘイダリ
編集:アシュカン・メーリ、アミル・エトミナーン
音楽:ペイマン・ヤズダニアン
出演:モハマド・ハッサン・マージュニ、パンテア・パナヒハ、ラヤン・サルラク、アミン・シミアル

2021年/イラン
日本公開日:2023年8月25日
カラー/1.85:1/5.1ch/93分/ペルシャ語
字幕:大西公子
字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン
配給:フラッグ
©JP Film Production, 2021
2021年 ロンドン映画祭 作品賞
2021年 フィラデルフィア映画祭
 アンサンブル賞(モハマド・ハッサン・マージュニ、
 パンテア・パナヒハ、ラヤン・サルラク、アミン・シミアル)
2021年 シンガポール国際映画祭 アジアンフィーチャー
2021年 マルデルプラタ映画祭 作品賞
2021年 レッドシー国際映画祭
 審査員賞/撮影賞(アミン・ジャファリ)
2022年 ルクセンブルグシティ映画祭 批評家賞/観客賞
2022年 サンフランシスコ国際映画祭
 新人監督賞(パナー・パナヒ)
2022年 ブカレスト国際映画祭 監督賞(パナー・パナヒ)

poster


story

 停車した車の中で、眠っている父親(モハマド・ハッサン・マージュニ)のギプスに描かれた落書きのピアノを、悪戯好きな6歳の弟(ラヤン・サルラク)が弾いている。母親(パンテア・パナヒハ)は助手席で眠っていた。運転担当の兄ファリード(アミン・シミアル)は、外へ出て水を飲みながら目の前の山々を眺めていた。

 スマホからアラーム音が鳴り両親が目覚める。目覚ましではない。置いてきたはずのスマホを弟がパンツの中に隠し持っていたのだ。怒った父親が取り上げ、母親はSIMMを取り出して捨てに行った。友達が心配すると駄々をこねる弟。だが、外に出て雄大な山々の景色を見て感動。「神様、この景色をありがとう」と地面にキスをする。いつものことだ。

 家族4人と病気の犬ジェシーを乗せた車が、干上がったウルシア湖を越えた頃、尾けてくる車に気づいた父親が店の前で車を停めさせる。ガソリン漏れを知らせようとしていたらしい。幸い、エアコンの排水漏れだった。母親が歌い出し、弟が無邪気に踊る。「やめて。最後の最後に。気が滅入る」とファリード。彼だけが憂鬱な顔をしている。

 ロードレース中のサイクリストが並んで横を通り抜けていく。車に挨拶した青年が転倒し、泣いていた。病院へ運ぼうと車に乗せて話をする。彼が賞賛するアームストロングは、ドーピングが発覚して自転車界から追放されていた。父親は青年に「曇りのない、正直な人生を歩め」と助言する。青年は自宅近くで車を降りた。

 湖の近く。犬をトイレに行かせたファリードと弟は一緒に遊んでいる。父親はある男に電話をし、今後のことを確認していた。彼は家と車を売って金を作り、その男に成人した息子の将来を託していた。乾燥地帯から丘陵に入った車が、羊の群れと出会う。父親が羊皮を選んで羊飼いに金を渡すと、霧の中から覆面男がバイクで現れ指示を出した。

 家族は国境近くの村へ向かう…。

アジコのおすすめポイント:

4人家族が車で旅をするロードムービーです。古い歌謡曲を流して歌い、休憩もはさみながら、埃っぽい未舗装の道路をひた走る一家。何も知らない腕白な弟は大はしゃぎ。でも、車を運転する兄の顔は憂鬱。なぜならそれは、最後の家族旅行だから。イランの複雑な社会背景を舞台に、国境地帯への危険な旅をする一家が描かれます。

監督はイランの巨匠ジャファル・パナヒ(『オフサイド・ガールズ』『人生タクシー』)の長男、パナー・パナヒ。父の元で映画を学んだ息子の鮮やかな長編デビュー作は、カンヌ映画祭をはじめ世界の映画祭で喝采を浴びました。日本では2021年の東京フィルメックスで、原題の『砂利道(Jeddah Khaki)』というタイトルで上映されています。幼い頃からアッバス・キアロスタミ監督や父など、イラン映画界の巨匠たちのもとで育った監督ですが、本格的に映画を勉強しようと思ったのは18、19歳の頃から。その持ち味は独自のもので、大自然や朝靄、高原の夜空など、美しい風景を素直に捉え、俯瞰した視点で映像を切り取っています。美しい景色を見ると感動して「神様、この景色をありがとう」と地面に畏敬の念を捧げる弟は、監督自身なのかも。道中、兄が父に尋ねられ好きな映画は『2001年宇宙の旅』と答えますが、野宿シーンに出てくるピカピカ光る寝袋とカラフルな寝間着のコントラストが綺麗で、父と弟が重なってお話しながらピューンと星空に吸い込まれていくシーンにはビックリ。ファンタジーやミュージカルも盛り込まれ、若い監督ならではの感性が存分に活かされています。アンサンブル賞も受賞した4人家族を演じるのは、両親がベテラン舞台俳優のモハマド・ハッサン・マージュニとパンテア・パナヒハ。弟は名子役として活躍中のラヤン・サルラク。兄は新人舞台俳優のアミン・シミアルが演じ、本作で長編デビューを飾りました。監督が友人などから実際に見聞きしたエピソードが反映されているという本作。悲しみを隠して旅をする家族の心の救いは、何も知らないでエネルギッシュに動き回る天真爛漫な弟の姿。イランの未来が託されているようです。

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