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兎たちの暴走

監督:シェン・ユー
脚本:シェン・ユー、チウ・ユージェ、ファン・リー
撮影:ワン・シーチン
編集:ハム・スンウォン
美術:チャン・ジエタオ
衣装:ワン・タオ
音楽:ペイマン・ヤズダニアン
挿入歌:「樂園」作詞・曲/ユーフェイメン(與非門)
出演:レジーナ・ワン(ワン・チェン)、リー・ゲンシー、シー・アン、チャイ・イェ、チョウ・ズーユエ、ホアン・ジェ、パン・ビンロン、ユー・ガンイン

2020年/中国
日本公開日:2023年8月25日
カラー/105分/北京語
字幕:鈴木真理子
配給:アップリンク
©Beijing Laurel Films Co., Ltd.
2020年 東京国際映画祭 TOKYOプレミア正式出品

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兎たちの暴走(兎子暴力/The Old Town Girls)

story

 煙突が立ち並ぶ工業都市の夜、娘のユエユエ(チャオ・ズーユエ)が誘拐され身代金を要求された父親のマー(パン・ビンロン)が混乱して走り、黄色いスポーツカーに乗った男女に呼び止められる。同じく娘シュイチン(リー・ゲンシー)を誘拐された父親シュイハウ(シー・アン)と母親のチューティン(レジーナ・ワン)だ。身代金は200万元。取り乱したチューティンは必死に止めるが、父親たちの主張に負け一緒に警察へ。その後、娘たちが戻ったという知らせに安堵するが、予想外の事態が発覚する…。

 高校生のシュイチンは父が再婚した女性と幼い弟の4人家族。だが、継母とはうまくいっていない。実の母は1歳の時に自分と父を捨てて都会へ出たが、シュイチンは彼女に淡い憧れを抱いていた。その母チューティンが、16年ぶりに街へ帰ってきた。母親が好きな米麺の店で待ち伏せするシュイチン。輝くように美しい母親はすぐにわかった。想像通りだ。再会を喜ぶ二人はチューティンの黄色いスポーツカーに乗り、母親が生れ育った隣街へ行く。チューティンは初めて舞台に立った古い劇場へ娘を連れて行った。彼女はダンサーになったのだ。

 高校では学園祭で披露するダンスの練習が行き詰まっていた。シュイチンの親友ジン・シー(チャイ・イェ)が仕切っていたが、皆、彼女のやり方に着いていけなかった。裕福な家のジン・シーは両親が不在で情緒不安定なところがあり、孤独に敏感だった。母親に気をとられているシュイチンとも仲違い中。そんな時、仲良くなったのがユエユエだ。彼女は広告モデルになるほど美人だが、貧しい父親と二人暮し。心臓病を患う父親は過干渉で暴力もふるっていた。

 シュイチンはチューティンに高校でのダンスレッスンをお願いする。颯爽と学校に現れた彼女は、クラス一のイケメン、バイ・ハオウェン(ユウ・ガンイン)を相手にダンスの基本を教え、チェコで習ったという練習方法で生徒たちを魅了していく。放課後、シュイチンはジン・シーとユエユエを誘い、4人でスポーツカーに乗ってトンネルへ遊びに行った。二人もチューティンの奔放さに惹かれ、4人で「青春の兎グループ」を結成。チューティンはシュイチンに「一緒にダンス教室をやろう」と将来の夢も語った。

 だがその夜、母の部屋にトゥ(ホアン・ジェ)がやって来る。実はチューティンには借金があり、悪い世界から逃げていたのだ。期限が迫り、母の命が危うくなっていた。シュイチンは母を守るために、ある計画を思いつく…。


アジコのおすすめポイント:

2011年に南京で実際に起こった事件に触発され、新たな脚色で創られた社会派の青春サスペンスドラマです。事件が発覚した冒頭から始まり、時間を遡って、どうしてそのようなことが起こったのかが綴られていきます。監督は広告業界をからドキュメンタリーの世界に入り、美術担当から監督に転身したシェン・ユー。2016年の第1回CFDG(中国人若手映画監督サポートプログラム)で脚本が入選し、監督協会の助成企画として完成。長編デビューを飾りました。芸術への造詣も深く、背景となった都市(四川省攀枝花市:はんしかし/パンジーホワ市)やトンネルの選び方、黄色いスポーツカーに象徴される色使い、挿入されるファンタジックなシーンなど、監督ならではのこだわりが随所に見られます。映像の美しさ、音楽のセンスにも注目です。主演は『軍中楽園』『鵞鳥湖の夜』などで、日本でもお馴染みのレジーナ・ワン(ワン・チェン)。自由奔放で華やかな表面の裏に、危険な世界に入り込み身動きできなくなっている危うい女性を演じます。そんな母親に憧れ、守ろうとする娘を演じるのは本作が映画デビューとなった新人のリー・ゲンシー。友人たちを演じるチャイ・イェ、チョウ・ズーユェも本作で映画デビュー。エンディングロールで流れる挿入歌「樂園」は、この兎グループの4人が歌っています。後半に危険な裏社会の使者として登場するのが、『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』のホアン・ジェ。特別出演ながらさすがの存在感で、優しさも持ち合わせる懐の深い男になっています。ユエユエを養女に欲しがる金持ち夫婦役で、プロデューサーのファン・リーとナイ・アン(ロウ・イエ作品のプロデューサー)も出演。上流、中流、下流に分かれる家庭環境の中で、それぞれに問題を抱えている少女たちが描かれ、大人社会に警告を発しています。

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▼公式サイト ▼予告編