logo

あしたの少女

監督:チョン・ジュリ
脚本:チョン・ジュリ
撮影:キム・イリョン(C.G.K)
編集:イ・ヨンリム、ハン・ジウン
美術:チェ・イム
音楽:チャン・ヨンギュ、チェ・テヒョン
出演:ペ・ドゥナ、キム・シウン、チョン・フェリン、カン・ヒョンオ、パク・ウヨン、イ・イニョン、シム・ヒソプ、チョン・スハ、チェ・ヒジン、ホ・ジョンド、ファン・ジョンミン

2022年/韓国
日本公開日:2023年8月25日
カラー/ビスタ/5.1ch/DCP/138分
字幕:福田友子
配給:ライツキューブ
©2023 Twinplus Partners Inc. & Crankup Film
2022年 カンヌ国際映画祭 批評家週間クロージング作品
2022年 中国・ピンヤオ国際映画祭
 ロベルト・ロッセリーニ賞 作品賞
2022年 ファンタジア映画祭 監督賞(チョン・ジュリ)
2022年 東京フィルメックス 審査員特別賞
2023年 シアトル国際映画祭
 新人監督賞・審査員特別賞(チョン・ジュリ)
2023年 ミルウォーキー映画祭  新生創作審査員賞
2023年 百想芸術大賞 新人女優賞(キム・シウン)


poster

あしたの少女(次のソヒ/Next Sohee)

story

 全州。ダンスレッスンのスタジオで一人、大好きなダンスを熱心に踊るソヒ(キム・シウン)は高校生。卒業を前に、就職担当の先生(ホ・ジョンド)から呼び出され、大手通信会社の子会社が運営するコールセンターの実習生になる。研修初日の帰り、OLスタイルで運送会社で働くイケメン彼氏のテジュン(カン・ヒョンオ)に会いに行くソヒ。二人はダンス仲間だった。

 しかし、配属されたコールセンターは顧客の解約担当部署で、解約阻止のノルマがあった。指導も受けるが、クレーム対応が多く皆、疲弊していた。しかもノルマの達成率が低いと成果給が出ず、給与も下がる。あるクレーマーが不満を本社に電話したため、対応したチーム長のイ・ジュノ(シム・ヒソプ)が責任を取らされる。職場の状況にうんざりしたソヒがテジュンに会いに行くと、彼も同僚のイジメに遭い丸刈りにされていた。

 ある朝、会社の駐車場で練炭自殺を謀ったイ・ジュノが発見される。内部告発の遺書もあったが揉み消され、ソヒたちは口止めの覚書を書かされた。新任の女性チーム長(チェ・ヒジン)になり、ソヒは人が変わったように成績を上げるが、実習生には成果給がすぐに支払われないとわかり、チーム長を殴って謹慎処分になる。しかし、卒業式に先生から会社と話をつけておいたと言われ、友人たちと会った後、ソヒは一人で冬の貯水池に入っていった。

 翌朝、ソヒは凍ったまま発見され、復職したばかりの刑事オ・ユジン(ペ・ドゥナ)が担当になる。当初は通常の自殺事件として、遺書の捜索や聞き込み調査を続けていくが、元同僚や友人たちの証言などから、様々な問題が浮上。会社、学校、教育庁、労働庁、警察をも絡む社会システムの深い闇が見えてくるのだった…。

アジコのおすすめポイント:

競争の激しい韓国ならではの社会構造に巣食う闇をえぐる問題作です。生徒に就職先を斡旋して就職率を上げる教師と学校、安い労働力として実習生を使い棄てる大企業、金や圧力に屈し都合のわるい事実を隠蔽する警察、効率重視の官公庁…そこには、個人の夢や自由、尊厳が反映されていません。嫌なら辞めればいいのにと思うかもしれませんが、親や教師の期待、経済的な問題、届かない夢…と事情は様々。誰もが強いわけではない。本作は2017年に起きた実際の事件をモチーフにしています。気丈で負けず嫌いの主人公だからこそ、ぎりぎりまで無理をした反動が強かったのかもしれません。これは、どこにでも起きうる問題だと問いかけてきます。監督は、巨匠イ・チャンドンのプロデュースした『私の少女』で鮮烈な長編デビューを飾ったチョン・ジュリ。8年ぶりの最新作で再びペ・ドゥナと組み、2部構成スタイルで本作を完成させました。実際の事件を忠実に再現した前半から一転。後半は事件を追求してきたジャーナリストに触発され、主人公のキャラクターができあがったとか。刑事として復職した主人公の正義感は、地方警察のいい加減な上司に「広域捜索隊が必要です!」と啖呵をきったり、ある人物を殴ったりと強烈で爽快なかっこよさ。監督や演じるペ・ドゥナの怒りも表されているようです。前半の主人公を演じた新人キム・シウンの自然体の演技にも注目です。


p2p3p4

▼公式サイト ▼予告編