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ソウルに帰る

ソウルに帰る(Retour À Séoul/Return to Seoul)

監督:ダヴィ・シュー
脚本:ダヴィ・シュー
撮影:トーマス・ファヴェル
編集:ドゥニア・シチョフ
美術:チェ・チョル、シン・ボギョン
衣装:クレール・デュビアン、イ・チュニュン
音楽:ジェレミー・アルキャッシュ、クリストフ・ミュッセ
出演:パク・ジミン、オ・グァンノク、キム・ソニョン、グカ・ハン、ヨアン・ジマー、ルイ=ド・ドゥ・ランクザン、ソン・スンボム、キム・ドンソク、ホ・ジン

2022年/仏、独、ベルギー、カンボジア、カタール
日本公開日:2023年8月11日
カラー/1:1.85/5.1ch/119分
字幕:橋本裕充
配給:イーニッド・フィルム
©Aurora Films/Vandertastic/Frakas Productions/2022
2022年 米アカデミー賞 カンボジア代表作品
2022年 カンヌ国際映画祭 ある視点部門正式出品

2022年 アテネ国際映画祭 作品賞
2022年 ハンプトン国際映画祭 観客賞
2022年 アジアパシフィック映画賞
 監督賞(ダヴィ・シュー)/新人俳優賞(パク・ジミン)
2022年 ベルファスト映画祭 作品賞
2022年 Qシネマ国際映画祭 NETPAC賞
2022年 ロサンゼルス映画批評家協会賞
 ニュージェネレーション賞(ダヴィ・シュー、パク・ジミン)
2022年 ボストン映画批評家協会賞 作品賞
2022年 東京フィルメックス 審査員特別賞


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story

 フレディ(パク・ジミン)は初めて韓国を訪れた。幼い頃、養子縁組でフランス人夫婦に引き取られ、フランス人として自由奔放に育った彼女。日本へ行く予定が、飛行機の都合でたまたまソウルに降り立ったのだ。

 宿のフロントの女性テナ(グカ・ハン)はフランス語が話せた。3日間の予定で部屋を取り、夜はテナの友人でフランス語が得意なドンフン(ソン・スンボム)と3人で食事した。唯一持っている韓国での幼い頃の写真を見せると、真面目な二人はフレディが実の親を探していると思い、養子縁組団体「ハモンド」を紹介する。

 思いがけない展開に、息苦しくなったフレディは店の他の客たちに次々と声をかけ、若い男性客や女性客たちと一緒に飲もうとテナやドンフンも招き入れる。翌朝、ゲストハウスで目覚めたフレディは記憶が飛んでおり、隣に寝ていたジワン(キム・ドンソク)ともう一度セックスをする。

 雨の中、フレディは地図を片手に「ハモンド養子縁組センター」を訪れる。滞在期間は2週間。手がかりは写真1枚しかない。ところが、写真の裏にあった番号から、職員が古い書類を探し出してくれた。彼女の韓国名はヨニで、全州生まれ。母親は全州に、父親は群山にいることがわかった。電報を送り、意思を伝えることはできるという。

 父親(オ・グァンノク)からすぐに連絡があり、フレディはテナを誘ってバスで群山へ行く。親戚一同で出迎えられ、父は海辺の町を案内。都会へ出た母親の話をし、忘れたことは一度もないと何度も詫びた。祖母(ホ・ジン)の願いもあり、父の家で家族と3日間過ごした。最後の日、父から一緒に暮らして欲しいと言われるが、自分はフランス人だからとタクシーで去ってしまう。

 ソウルへ戻る途中、フランスの養母に電話するフレディ。養母は心配していた。一方、全州の母親からはとうとう返事がなかった。帰国前、フレディはテナとジワンを誘ってクラブで飲んでいたが、未練たっぷりのジワンはプレゼントまで用意し、ソウルに残って欲しいと懇願する。

 フレディは理解不能な感情を持て余し、イラついて暴走していく。二人は彼女の態度に傷つき、去って行った。深夜、フレディがクラブDJとゲストハウスにしけこもうとしていると、突然、酔った父親が現れて妨害される。毎日届くメールにもうんざりしていたフレディは逆ギレしてしまう。

 2年後のソウル。27歳の誕生日。黒いスタイリッシュな服に身を包んだ、赤いルージュのフレディがいた…。

アジコのおすすめポイント:

フランス人の家庭で養女として育った韓国人女性が、たまたま初めて訪れたソウルで実の両親を探すことになり、様々な感情の波に抗っていく複雑な人間ドラマです。ちゃんとした家庭で何不自由なく奔放に、フランス流に育った彼女。最初は単なる好奇心からだったかもしれませんが、実の父親や韓国で出会った若者たちと触れ合ううちに、韓国ならではの考え方とぶつかり猛烈に反発します。それでも逃げ出さず、敢えて問題に向き合っていく。それこそが、彼女ならではのアイデンティティなのかもしれません。まさに、戦士のようなタフな女性。そんな彼女の25歳から8年後の誕生日までを追い、心の変遷が描かれます。監督はフランスで育ったカンボジア系移民のダヴィ・シュー。フランスとカンボジアの両方でプロデューサーとしても活躍。監督としては本作が長編2作目となります。友人の経験談から着想を得た監督は、主演のパク・ジミンと出会ったことで3年をかけて脚本を磨き上げ、自分の限界も超えていったそう。そうやって、主人公の強烈なキャラクターが生まれました。本作で女優デビューしたパク・ジミンはビジュアルアーティスト。韓国で生まれ、8歳からフランスに。養子縁組とは無関係ですが、作品の本質を広げ、養子縁組のみならず文化や考え方の違い、ジェンダーの領域にまで踏み込み、さらにアイデンティティが変容していく姿も演じています。矛盾した感情の渦の中でもがきながら、闘い続ける女性像はかなり新鮮です。韓国からは演技派のオ・グァンノクが複雑な父親役を、キム・ソニョンがつたない英語で媒介役となる叔母役を好演しています。

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