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セールス・ガールの考現学

セールス・ガールの考現学(Khudaldagch ohin/The Sale Girl)


監督:ジャンチブドルジ・センゲドルジ
脚本:ジャンチブドルジ・センゲドルジ
撮影:オトゴンダワー・ジグジドスレン
音楽:ドゥルグーン・バヤスガラン(Magnolian)
出演:バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル、エンフトール・オィドブジャムツ、サラントヤー・ダーガンバト、バザルラグチャー、バヤルマー・フセルバータル、ガンバヤル・ガントグトフ、ツェルムーン・オドゲレル

, 2021年/モンゴル
日本公開日:2023年4月28日
カラー/2.00:1/5.1ch/123分/モンゴル語・ロシア語
字幕:大塚美左恵
モンゴル語監修:フフバートル
配給:ザジフィルムズ
©2021 Sengedorj Tushee, Nomadia Pictures
2022年 ニューヨーク・アジアンフィルムフェスティバル
 グランプリ(作品賞)
2022年 大阪アジアン映画祭
 薬師真珠賞(バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル)
2023年 ヴズール国際アジア映画祭
 ゴールデン・シクロ賞(作品賞)

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poster

story

 落ちていたバナナに滑って足を骨折した大学生のナモーナ(バヤルマー・フセルバータル)は、真面目で野暮ったいサロール(バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル)に足が治るまでアルバイトの代理を頼みこむ。特に親しいわけではないが、簡単な仕事で高給と言われ、サロールは引き受けることに。連れて行かれたのは、街角のビルの半地下にあるアダルトグッズ・ショップだった。

 規則は、店が終わったら売上をオーナーに届けに行くこと。猫の餌も忘れずに。なんとか初日を終えて、オーナーのカティア(エンフトール・オィドブジャムツ)が住む高級フラットへ。彼女は謎の多い人物だったが、生真面目なサロールに興味を持ったようだ。

 サロールは両親と幼い弟との4人家族。父(バザルラグチャー)は元ロシア語教師だが、今は母(サラントヤー・ダーガンバト)がスリッパを縫って市場で売り、生計を立てている。二人とも、大の韓国ドラマファンだ。

 サロールは親の勧めで原子力工学科に入ったが、ほんとうは絵を描くことが好き。授業中は先生の似顔絵ばかり描いている。BFのトブドルジ(ガンバヤル・ガントグトフ)とは、いつも外でタバコを喫う。スマホばかり見ている彼の夢は、俳優になること。韓流スターに憧れているのだ。

 店にはいろんな客がやって来た。大学の先生が来たこともある。サロールも商品説明に慣れ、配達に行くこともあった。配達先ではいろんな場面に遭遇した。だが、店が終わるとヘッドホンをつけ、自分だけの世界に浸る。音楽を聴いている時は、自由な気分になれる。

 ある日、カティアがピンクフロイドの「狂気」を見つけた!と、LPレコードを手に喜んでいた。「あの時代は面白かった」カティアはサロールをロシアレストランに連れて行った。店員も常連客たちも、皆が彼女に敬意をはらっている。カティアは元バレリーナだったのだ。

 そんなある日、配達先で客から襲われそうになったサロールは、カティアに不信感を持ち絶交を言い渡す。後日、カティアはサロールの家を訪れ、彼女を草原へ連れていく。路上で野菜やきのこを売る子どもたちがいる。それはサロールが今まで観たことのない光景だった。

 その日以来、サロールにも変化が訪れる…。


アジコのおすすめポイント:

現代モンゴルの都会を背景に、親の希望に応えるため大学に通っている普通の女子大生が、たまたま出会ったアダルトグッズ・ショップのオーナー女性との出会いを通じて、自分自身の夢や希望を開放していく自分発見ストーリーです。モンゴル映画、というだけでも珍しいのですが、女性映画でありながらアダルトグッズ・ショップや性をモチーフにしているところも斬新。こんな一風変わった作品を作ったのは、モンゴルの映画、TV、演劇と多方面で活躍するセンゲドルジ・ジャンチブドルジ監督。モンゴルといえば大草原や遊牧民の映画を想像するのですが、ほとんどは内モンゴルと中国の合作作品。また浅野忠信が主演した『モンゴル』(セルゲイ・ボドロフ監督)がロシア映画のように、ロシアとの関係も深いんですね。主演は初主演作となった本作で映画デビューしたバヤルツェツェグ・バヤルジャルガル。鮮烈なデビュー作で、昨年の大阪アジアン映画祭では「薬師真珠賞」を受賞しています。一方、彼女を導く女性を演じたのはベテラン女優のエンフトール・オィドブジャムツ。メインキャストで映画に出演したのは約30年ぶりとのこと。もう一人、主人公が音楽を聴いていると、ミュージカル映画のように登場する本物のシンガーは「Magnolian」の名で世界でも注目されているシンガーソングライター、ドゥルグーン・バヤスガランです。来日経験もあり音楽ファンは要チェック! それにしても…韓流ブームはモンゴルへも浸透しているのですね。

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▼公式サイト ▼予告編