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春江水暖〜しゅんこうすいだん

春江水暖〜しゅんこうすいだん(春江水暖/Dwelling in tha Fuchun Mountains)

監督:グー・シャオガン
脚本:グー・シャオガン
撮影:ユー・ニンフイ、ドン・シュー
編集:リウ・シンジュー
美術:ジョウ・シンユー
音楽:ドゥ・ウェイ
衣装:ワン・リーナー
芸術コンサルタント:メイ・フォン
出演:チェン・ヨウファー、ワン・フォンジュエン、スン・チャンジエン、スン・チャンウェイ、チャン・レンリアン、チャン・グオイン、ドゥー・ホンジュン、ポン・ルーチー、チュアン・イー、スン・ズーカン、ドン・チェンヤン、チャン・ルル、ムー・ウェイ

2019年/中国
日本公開日/2021年2月11日
カラー/16:9/5.1ch/150分
字幕:市山尚三、武井みゆき
字幕監修:新田理恵
配給:ムヴィオラ
(c)2019 Factory Gate Films


2019年 カンヌ映画祭 批評家週間クロージング作品
2019年 東京フィルメックス 審査員特別賞
2019年 ハンブルク国際映画祭 批評家賞
2019年 中国ヤングジェネレーション映画祭 作品賞
 撮影賞(ユー・ニンフイ、ドン・シュー)
2019年 マカオ国際映画祭
 中国語映画コンペティション 作品賞
2019年 ファーストユース映画祭
 作品賞/監督賞(グー・シャオガン)
2019年 重慶ユース映画祭 作品賞
2019年 上海国際映画祭 インディペンデント映画賞
 作品賞/新人監督賞(グー・シャオガン)


poster

story

 杭州市、富陽には悠久の大河、富春江が流れている。元代には黄公望がこの地に隠遁し、有名な「富春山居図」を描いた。はるか昔の秦代には孫権がここで呉を建国し、その子孫は今も龍門古鎮に住んでいる。しかし今、富陽地区は都市開発の只中にある。

 顧(グー)家の家族がレストランに集まり宴会を開いている。家長である老母ユーフォン(ドゥー・ホンジュン)の誕生日を祝っているのだ。場所は長男ヨウフー(チェン・ヨウファー)が経営する「黄金大酒店」。次男ヨウルー(チャン・レンリアン)は漁師。三男ヨウジン(スン・チャンジエン)はダウン症の息子カンカン(スン・ズーカン)を一人で育てているが、借金まみれだ。母は末っ子の四男ヨウホン(スン・チャンウェイ)をラオシャオ(老小)と呼んで可愛がっているが、未だに独身だった。

 停電と断水に見舞われながらも宴会は賑やかに続いていた。しかし、母が突然倒れて救急車で病院へ。脳卒中だった。大事には至らなかったが、認知症が進んでいる母の面倒をみなくてはならなくなる。長男夫婦はレストラン経営で忙しく、金銭問題を抱えていた。一人娘グーシー(ポン・ルーチー)の縁談で解決しようとするが、彼女は密かに教師のジャン(チュアン・イー)と付き合っている。

 ヨウルーと妻アイン(チャン・グオイン)の家は移転計画地区にあり、今は漁船で暮している。一人息子ヤンヤン(ドン・チェンヤン)の結婚が決まり、夫婦は賠償金で息子の新居を購入するつもりだ。金の普請をして回っているヨウジンは借金取りに追われているが、イカサマ賭博で一儲けしようとしている。ヨウホンには見合いの話が進んでいた。

 結局、母親はしばらく長男の家で暮らすことに。妻のフォンジュエン(ワン・フォンジュエン)は煩わしく思っているが、グーシーは優しく接し「好きな人がいるの」とジャン先生とのことを打ち明けるのだった。

アジコのおすすめポイント:

古の歴史と風光明媚な自然が豊かな富春江にある富陽を背景に、3年の歳月をかけて、ある大家族の物語を四季折々の風景と共に描いた人間ドラマです。一人でドキュメンタリーを撮っていたグー・シャオガン監督が北京電影学院で学んだ後、初めてクルーと組んで作り上げた、なんと長編デビュー作品。故郷・富陽の急激な変化に衝撃を受け、この変化を家族の物語を通して記録しています。ユニークなのはそのスタイル。この地を描いた水墨画「富春山居図」に着想を得て、長い絵巻物を展開していくような作品にしたかったとか。それが見事に功を奏し、流れるような1カット長回しのシーンがいくつも挿入されています。(一番長くわかりやすいのは水泳競争のシーン)台湾ニューウェイブに影響を受けたそうで、そのテイストはまさに、ジャ・ジャンクー監督の世界をホウ・シャオシェン監督の眼差しとエドワード・ヤン監督のストーリーテリングで紡いだような印象です。


ドゥ・ウェイのアンビエントな音楽が現代的な味付けなっており、古さと新しさが共存するまさに現代の動画絵巻。観ているだけでもうっとりする本作は、世界の映画祭でも高く評価されています。描かれているドラマが中国ならではのものであると同時に、誰にでも起こり得る普遍性があるところも秀逸。さらに、演じている人々がほとんど監督の家族や親戚・知人というのも驚きです。それぞれに個性的な役を自然体で演じているのは、本人に近い役柄だからだそう。時代を感じさせる三世代の親子の考え方も投影されています。アジコ的には本になったジャン先生のミステリー小説が不気味だけど気になります(笑)。さて、本作は「巻一完」で終わっているのですが、監督は三部作を計画中。舞台は絵巻物のように長江に沿って移動していくようです。コロナ禍がどう影響していくかわかりませんが、「巻二」「巻三」が楽しみです。


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